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しょうもない

ハウス・オブ・グッチ リドリー・スコット

老いてなお創作意欲の衰えないリドリー・スコットの作り出す家族の崩壊を映す映画。その貪欲な姿勢が凄まじい『ハウス・オブ・グッチ』は広い意味で資本についての映画だ。資本主義の当然の顛末。

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なによりもこの映画はレディー・ガガで成り立っている。『アリー/スター誕生』で俳優としての才能を見事に開花させた彼女を、このドラマのテーマである”欲望”の中心に据えたキャスティングがこの映画の勝因だろう。とにかく素晴らしかった。彼女の繊細で大胆な演技はこの映画全体を支配する。

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そして大スターである彼女だからこそ演じられるパトリシアは、大スターレディー・ガガだから成功した。ブランドものの映画が時としてそのブランドに押しつぶされる場合もある中、レディー・ガガはそのまばゆいブランドを見事に着こなし期待に答えている。そしてイタリアなまりのイントネーションも見事だった。

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この映画には大物俳優が勢ぞろいしているのだが、中でも象徴的なのはアル・パチーノだろう。彼がハリウッド映画史に残した功績は絶大だが、1972年に大抜擢された『ゴッドファーザー』をすぐに連想する。あの映画はアメリカのイタリアマフィアを描いた映画史に残る傑作だが、あのドラマとグッチの物語がものの見事にシンクロナイズするのだ。一代で名声を築いたビトー・コルレオーネとその後の家族の崩壊がこの映画のグッチ家と重なる。

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そしてもう一つは、資本という獰猛なケダモノが大きな利益に群がる仕組みが絶妙な手法で描かれる。アラビア語で会食するシーンがそれだ。いま資本の見えない部分の多くは中国とアラブ中東に集中している。それは即ちいずれもが資源国であって、エネルギーを握る国の流動資本が強さをますます増していることを示す。

家族の崩壊の歩みと、巨大資本に群がるケダモノのような株式が、この社会を狂気の中に陥れている。そういう映画だ。
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新聞記者 Netflix 藤井道人

映画とこのNetflixシリーズは重なっている。映画で描ききれなかった部分をこのシリーズで細かく補おうとしている姿勢がいい。Netflix版『新聞記者』全6話。映画同様藤井道人監督が河村光庸氏の企画を受け入れて作ったようだ。

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物語の詳細はこの際どうでもいいことで、映画『新聞記者』をこのテレビシリーズは何をどのように発展させたのか?ということに意味があると思う。ぐいぐい進む圧倒的なドライブ感のある素晴らしいドラマだった。
 

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『新聞記者』が軸のドラマだが、今回最もシンパシーを感じたのは新聞配達員のシーンだ。奨学金で大学に通う二人、横浜流星さんと小野花梨さんと、新聞配達店のご主人をでんでんさんが演じていて、このあたりのシーンが興味深い。新聞配達と新聞記者がどのように繋がるのか、というミステリー的なリードがまたうまくできている。そして全く政治や新聞に興味を持たない新聞配達員の成長が描かれる。さらに、コロナがこの二人の命運を分けてゆく。小野花梨さんがバスに乗って去ってゆくシーンは涙なくして見られない。「人生はあらかじめ決められている」とつぶやくシーンもまた痛み入る。
 

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とにかく今をときめく素晴らしい俳優陣がこのドラマを支えるのだが、最もインパクトがあったのはユースケ・サンタマリアさん演じる広告代理店。この存在が国を動かすという恐怖。その冷徹さは見ていて不愉快になる。すごい演技だ。
そしてなんといっても、田中哲也さんが映画と同じ役で登場したときは背筋が凍る思いだった。映画とNetflixで共通する役はおそらく田中哲也さんの役だけだろう。これまた国家を守るための官僚の恐ろしさを示す。綾野剛さんに詰め寄るシーンは胃が痛くなるようなシーンだ。
他にも名古屋の検察官を大倉孝二さんが演じている。どちらかというとひねった役が多い大倉さんだが、今回は上からの圧力に反発する検察官を演じている。その誠実さが実に素晴らしくて感動する。
 
このドラマは、国家のトップが全てに対して強い圧力をかける仕組みを掘り下げる。この日本の政治の無力感はどこにあるのか?という問いを構造に見出そうとしているところが複雑だ。官僚も検察も財界もメディアもなにもかもが政治に忖度する社会。政治家は全員悪人で、その手はすべてに広げられている。悲しいことにそのことに最も無関心な国が日本だ。
 
よくテレビなどを見ればわかるだろう。
テレビで政治が語られることはほとんどない。お笑いとバラエティ番組だけが垂れ流されて、選挙期間は肝心の政治討論なども許されず、与党に阿るタレントのような評論家が大きい顔をしている。そんな国の未来を不安にも思わない国民。無気力化された国民の姿の代表を新聞配達員に置いた切り口がこの映画の要だ。
ラストシーンは「このドラマはフィクションである」と示して、それを黒塗りにするあたりの過激さを評価したい。
町山さんは、ある人物が寝たきりになって言葉も話せない植物状態になっているシーンを、日本人の象徴として描いていると断言している。なるほど大きくうなずく。この国の国民は、ほとんど植物状態なのだ。
必見である。
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梅沢富美男、泉ピン子 特別公演 明治座

いやー、素晴らしかった。梅沢富美男さんの公演は二度目なのだが、本当に感動する。


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明治座は自分を含めた高齢者で満席だ。
明治座やこの類の舞台の醍醐味は、ステージだけでなくその周辺にもある。豪華なお土産屋さんが並んでいて、30分ほどの長い休憩時間ごとにごった返すのだ。

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そもそも開演の1時間以上前に開場となる理由は、この休憩時間に食事ができるため、食事の予約で並ぶ目的のようだ。知らなかった。ステージに食事にお土産にと、様々な楽しみが詰まった劇場が明治座なのだろう。東銀座の歌舞伎座も同じだし、思えば名古屋の御園座もそうだった。このシステムを落語でもうまく使えばいいと思う。寄席の売店はいかにも寂しい。

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それはともかく、梅沢富美男さんと泉ピン子さんの掛け合い楽しく、笑いあり涙ありのドラマ。梅沢富美男さんと早変わりも見ものだ。

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三幕構成の舞台の最後は、梅沢富美男さんの女形からなる大勢の出演者による演舞が展開されるのだが、この瞬間を楽しみに来ているお客さんも多いのではなかろうか。その衣装、その立ち姿、その照明などなど、素晴らしい演出圧倒される。これはビデオなどで見ても伝わるます。この空気感、このグルーヴ。観客の拍手と声援。何もかもが素晴らしい。そしてこみ上げてくるものが・・・
時々はこういう豪華な体験を楽しみたいものである。
 
 
 

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サンダーバード55 GOGO

朝一番の回になんとな間に合って、ピカデリーに入ると、サンダーバードのレプリカが並んでいた。

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考えることは皆同じ。

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みうらじゅんさんが公式HPでサンダーバードの基地は格差の象徴だったと言っていた。

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ピンクのロールスロイスはさすがに見たことがない。

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劇場は満席。公開二日目ということもあってこの満席なのだが、隣の席がなぜかいくつか空いている。と、思ったら溢れそうな大きなポップコーンと飲み物を一人ひとり持ち抱えた家族連れと思しき方が隣の席に座る。そして予告編の間、ずーーーーーーっtpポップコーンをむしゃむしゃむしゃむしゃ食べている。これはこれで楽しそうでいいね。むしゃむしゃむしゃ・・・ずっとコロナ中、静かな映画館しか知らないので、こういう喧騒も映画だよな、と嬉しくなる。楽しい映画鑑賞が帰ってきた!
と、
思ったら、隣の彼女は映画が始まるとともにずーーーーーっと爆睡していた。彼女は映画館にポップコーンを食べに来ていたのだ。それはそれでいい。映画館がポップコーンを楽しむ場であっても、空席の目立つ劇場よりはましだ。

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今年60になる自分はというと、映画が始まって「ファイブ!」というカウントダウンが始まっただけでポロポロ涙がこぼれてくる。あのサンダーバードがこの大きなスクリーンに映し出される。そしてあのぎこちない動きや人形劇に使われるコードがそのまま映し出されるのである。これはすごいことだ。

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映画はほとんどペネロープが主役だ。満島ひかりさんがうまく演じていた。ペネロープがパーカーをこき使う話しで終始する。このドラマがこれほど洒脱でおしゃれなドラマだったとは知らなかった。幼い頃はメカのシーンにばかり目が奪われていたが、当時とは全く違うシーンが気になった。とてもいい体験。映画がエンターテイメントであり、そしてポップコーンでもなんでもあり、という仕組みを堪能できた。うれしかった。
 
 
 

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スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム ジョン・ワッツ

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』を鑑賞。実は『ファー・フロム・ホーム』を見ていないことに前日気がついて慌てて鑑賞。
昨年の世界公開、今年の日本公開とずっと高い評価をされてきた話題の映画なので、ここでなにかを示すのは愚の骨頂というものだ。どうでもいい。要するにそういう映画だ。いいとかわるいとか、好きとか嫌いとかを無視して、とにかく見てもらうしかない。

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いずれにしても、この映画に出てくるドクター・ストレンジを見れば明らかな通り、スパイダーマンアベンジャーズになった、というのが大きな転換になっている。(映画のセリフとして出てくる)つまりもう何でもできる。『インフィニティ・ウォー』にトム・ホランドが出たりしてもわかる通りなんでもあり。つまるヒーローという務めを一人で背負う必要がなくなったのだ。

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この映画でもそのことが語られる。長い歴史を踏まえ、過去のスパイダーマンシリーズを多いにリスペクトし、善と悪の関係とそこに至るまでの苦悩を解き放つことでこの映画は新時代へと進んでゆくのである。これはいいことだ。いいことなんだと思う。

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そして映画製作がより大きくリスキーなビジネスになってゆくこともほのめかす。いや、これも悪いことではなく、いいことだ。大きな資本が世界を包み込むように席巻してゆくことを否定はしない。ただ、こうしたリスクは常に崩壊の危険にもさらされている。絶大な力はその反動と背中合わせだ。アベンジャーズスターウォーズも同じことを示しているではないか。そしていずれもディズニーの資本に支配されている、ということだ。もはやSONYもディズニーの下僕だ。
最後に、子どもたちの感想を人伝えに聞いてみて印象的だったのは「記憶がなくなるという部分がすごく怖かった。」という感想があった。友達とか親とか兄弟とかから、自分の存在が記憶として消される恐怖を子どもたちはさかんに言っていた。なるほど、老いに入る自分は消される側だが、これから長い人生を生きる若い方にとって、存在の消去はどんなに恐ろしいことだろう。
 

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さらば! 2021年 ジャック・クラフ

このブログでかつて紹介した『Death to 2020』という映画があったが、これはその続編である。その名も『Death To 2021』。出演メンバーもヒュー・グラントなど同じ俳優を使っている。

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そして完全に見る側と世の中をコケにする。バカにしている。世の中は狂っている、ということがこの映画の前提条件だ。約1時間のこの映画は、小気味よく辛辣に社会を罵っている。
世界の2021年をたったの1時間で振り返るのだが、その内容は極めて的を居ている。
バイデン政権誕生から始まり、前作同様ジョージ・フロイド事件のその後も追いかける。異常気象による洪水、森林火災などが環境問題にも及び。知らなかったのだが、メキシコ湾で海が燃えるという災害があったようで、このシーンはまるでタルコフスキーの『惑星ソラリス』を思わせた。

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ほかにも東京五輪、アフガン問題、テキサス州のハートビート法、『イカゲーム』や『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に話題が及び、最後はオミクロンについて紹介して終わっている。

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クリスティン・ミリオティ演じる普通の主婦が前作以上に狂っていて笑わせる。ワクチン接種を拒否し、陽性反応を知っていてホームパーティを開き、道行く人のマスクを取り外しまくるという、トランプの代理人みたいに過激な行動が笑わせる。

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笑わせるのだが、このシリーズには一貫して見る側の信頼を裏切り続けようとする姿勢が示される。アメリカだけでなく、世界で起きている様々な事件や現象が、もはや人の手で補うことができない局面に至っていることを強く感じさせる映画だ。
必ず見るべき!
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ライトニング・ムラリ バジル・ジョセフ

長い映画だったが、これはヒーローものというよりも、トッド・フィリップスの『ジョーカー』だった。いや、ことによると『スパイダーマン』シリーズや、ほかのヒーローものの原点にあるべき重要なことがこの映画には描かれているような気がする。
 
とにかくこの映画の悪役は極めて絶望的だ。シブという見かけのさえない男は、思いを寄せる女性が結婚し子供が生まれ、それでもこのウシャという女性を追いかける。ウシャの夫がいなくなってチャンス到来と思いきや、彼女の兄に妨害され、永遠にシブのウシャに対する思いは伝えられない。シブが雷を直撃して超能力を得た最後の最後にウシャはやっとシブの気持ちを理解する。この告白まで28年。彼は「告白のしかたがわからなかった。」と涙を流す、ウシャもそれに応じてシブの気持ちを受け入れる。しかし・・・

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この厳しい敵役としての存在をどうしても見過ごすことはできない。彼がどうしてこのような悪の存在に追い詰められたのか。魔女狩りのごとく村人から追い詰められスポイルされ、慕ってきた女性と子供まで失う辛さ。その反対で、同じ力を獲得したジェイソンは、父親が舞台で演じたスーパーヒーロー像を胸に抱いて大人になる。しかし超能力のおかげで誤解を受け警察に勾留されてしまう。

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ヒーローとその敵が紙一重なのは世の常だ。『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で過去に対決した敵役を一手に引き受けて真正面から対峙する、というドラマにもあるとおり、善と悪はコインの裏表でその実態は同じものだ。
黒澤明監督の『野良犬』や『天国と地獄』、あるいは『七人の侍』もまた善悪を明確にしたドラマでありながら、その向こうには戦争や貧困、あるいはその闘争の歴史が刻まれている。特に『野良犬』で村上という刑事が犯人の遊佐を追い詰めるシーンは胸を打つ。この追いつ追われつする二人は、実はいつどちらにころぶかわからない立場だったのだ。
そうしてみると、この『ライトニング・ムラリ』のシブを単なる悪役として片付けることはできない。この恵まれない男には救いがたい出自の悲劇や社会事情があったのである。そのことが映画の冒頭で丁寧に描かれているので、これからご覧になる方はよく確認いただくといいだろう。
(=^・^=)

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