dalichoko

しょうもない

See You Yesterday

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暇つぶしに見たこの映画だが、これを単なる子供だましの映画だとかなんとかと感想やレビューを書いている方がいたとしたら、それはお門違いである。ここは冷静になるべきだ。これはすごい映画だった。

 

まず、なぜマイケル・J・フォックスが出ているのか?それは言うまでもなく『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い起こさせるためだ。あの映画もタイムマシーンのデロリアンで過去に遡る映画だ。しかし、、あちらが『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でこちらが『シー・ユー・イエスタデイ』なのはなぜか?

 

よく考えると、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の主人公の白人少年が1985年から30年さかのぼることの意味はまるでなく、しかもあの映画には大きな欠陥が存在する。1955年からの30年は、アメリカという国が最も大きく変化した期間である。その意味であの映画に黒人が虐げられた歴史について言及していないのは極めて不自然だ。

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実はこれロバート・ゼメキスの問題なのだ。彼の代表作『フォレスト・ガンプ』がそうなのだが、あの映画は主人公のガンプが時代を超えて生きる姿を映す映画で、その中にベトナム戦争は描かれても黒人解放運動は全く触れられていないのだ。それは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』も同じで、いかにも白人至上主義に固められたがちがちの保守派的立場をとるゼメキスの偏見がそのまま表れているのだ。

 

この『シー・ユー・イエスタデイ』は、『ブラック・クランズマン』などのスパイク・リーが仕掛けた時限爆弾のような皮肉な映画となっていて、冷静に見るとこの主人公の黒人少女は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマイケル・J・フォックスが演じたマーフィの対岸にいるのだ。

 

小さな事件をきっかけに黒人の少年少女がたった一日を行き来する。そして10分間という限られた時間で何かをしなければならないが、何度やってもうまくいかない。

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決定的なのは、主人公の兄が白人警官の誤射されて死ぬ、という結末が何度も何度も繰り返されるのだ。『フルートベール駅で』や『デトロイト』のような黒人に対する迫害という厳しい現実をこの映画でもしっかり見せている点で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を完全否定したのである。ここは拍手を送るべきところだ。

 

少女が巻き起こした事件で兄が死に、そのことで暴動が起きて大騒ぎとなる、という展開は笑えない。そして映画の終わり方も実に見事で、「See you yesterday」と言い残した兄の姿がぼやけてゆくシーンを暗示的に示しつつ、少女が必死に生きようとする姿を印象付けている。ここは無意識に涙が止まらなかった。

 

短くまとめたいい映画だし、コメディとしての語り口もうまいが、実はこの映画にはアメリカという国が過去に見過ごしてきた現実、見て見ぬふりをしてきた現実をしっかりと見せているのである。

 

必見である。

 

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