dalichoko

しょうもない

上流国民/下流国民 橘玲著(小学館新書)

かつて橘玲氏の著書としては『言ってはいけない』と『もっと言ってはいけない』(いずれも新潮新書)を読ませていただき、かなりショッキングな内容に圧倒された。
 

 
あれから数年を経て、再び知性を揺るがすような常識破りな本を出されたのを知り、咄嗟に購入してしまった。
 
冒頭に昨今起きている事件、例えば高齢ドライバーが幼児を跳ねた事件や、元官僚のバカ息子を父親が殺した事件などで、ネット上炎上する批判の対象が彼らを”上流国民”と呼ぶことへのいわれのない不快感である。
 
では”下級国民”とは何か?という問いにこの本は応じようとしているのである。
 
例えば日本の平成デフレの原因のひとつが、団塊世代の雇用を死守したことによるもので、令和では彼らの年金を死守するためにほかの世代が苦しむという構造をわかりやすく示す。団塊世代は人口も多いので、自らの世代を犠牲にして若者を豊かにすることなど考えておらず、この流れはガダルカナル島で多くの日本兵が死んでゆくのを大本営が放置したことと何ら変わらない、とこの本は述べている。
 
ではこのような事態を生じさせたものとは何か?といえば、それは産業革命以降先進国の国民に与えられたリベラル化であり、知識社会がそうさせたのではないかと問う。自由を手に入れることで、能力主義に埋没した人類は、ポイ捨てされる下流国民を生み、捨てられた国民から指示を得たのがトランプやブレグジットなどのポピュリズム現象だと説いている。
 
もはや人類は知識社会化することで、排除される階級を作り、中流が崩壊することで富の集中を加速させたというのである。
 
ある意味納得させられる内容であった。
 
この本は、ある意味で様々な過去の名著や論文などを並べることで、より一層学習機会を広げようとする試みを感じさせる。
 
特にウルリッヒ・ベックの『危険社会』からの引用は学ぶ点があるだろう。
 
 
 
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