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しょうもない

日本の戦争映画 春日太一著

戦争映画、というか戦争に対する嫌悪感から”戦争”名のつくものに思い入れが薄い。闇雲に「戦争は悪だ」とか「戦争は嫌いだ」という理由で、戦争にまつわる情報を避けてきた自分がいて、映画についても同様であった。少なからず戦争を美化することだけは避けたいという思いがあった。

 

しかしこの本は実によくできていて、戦争映画を紹介する本でありながら、その特性と時代の傾向などをわかりやすくカテゴライズしている。そしてそれぞれの傑作の特徴や見どころを短くまとめているだけでなく、作り手(監督やプロデューサーや脚本家)の敗戦時の年齢や思いなどを読み取ることで、その映画の価値を高めている。

 

終戦直後に作られた映画が、実は戦争を実体験している人たちが作った映画で、しかもかなり反戦色が濃い作りであることが示される。当時の映画作家は特に左翼思想の強い才人が多く、敗戦国日本の悲劇的な演出が多彩だ。しかし中には脚本家の水上洋子のようにドラマを淡々と描く作家もいる。その理由を彼女は「当時の被災者に話を聞いても、誰も悲劇的なことを言わない。」という反応に基づいているらしい。

 

例えば渥美清さんの『拝啓天皇陛下様』という映画の悲惨さは言葉にしにくい。飢餓状態で貧しい男が戦争に駆り出されると、食事は出るし友人はできるし幸せだ。しかし戦争が終わるとまた乞食同然の生活に逆戻りするので「拝啓天皇陛下、どうか戦争をやめないでください。」

 

『日本のいちばん長い日』のように閣僚の愚策を語るドラマは容易いが、東条英機を主人公とする映画などは、彼が当初和平を探っていた、という出だしから真珠湾の成功を機にどんどん傲慢になってゆく過程を描く作品もある。この中では、マスコミが煽り立てる背景なども描かれていて複雑だ。戦争は日本人全員に責任があるろいうことを言いたいのだろう。

 

今年もまた終戦の日が近づく。コロナの影響で式典はないそうだ。このまま戦争が薄れてゆくことを思うと心が痛む。この著書は映画の内容をある意味淡々と解説しながら、戦争が多面的で観念的なものであるこを明示する。最後に片渕須直氏とのインタビューで戦争の現代性についても説明しており、より一層の臨場感を感じさせる。特攻隊の友を多くなくした岡本喜八を特集している点もまた興味深い。

 

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