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ユーロビジョン歌合戦 〜ファイア・サーガ物語〜 Netflix

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スウェーデンから独立したアイスランドという国の話で、1950年代から続く”ユーロヴィジョン”というコンテスト(歌合戦)への出場を夢見る男女の話。俳優には著名人を並べ、日本ではあまり馴染みのない”ユーロビジョン”を取り上げたことだけで価値のある映画だ。そして何よりアイスランドという国の歴史と、彼らを中心とする世界観が巧妙に演出されていて面白い。情報量が多ければ多いほど楽しめる映画だ。

 

 

まず、ユーロビジョンというコンテストの存在を初めて知る。この映画で取り上げられている以上に実際は大きな盛り上がりがあるようだ。しかも1950年代半ばから始まったコンテストは、アバなどが優勝した実績がある。受賞曲は”恋のウォータールー”。ナポレオン戦争の終焉と恋愛を重ねた歌だ。これはこの映画の主人公の男女とも重ね合わせているようにも見える。アイスランドの片田舎で暮らす、夢見る男女の話。

 

そしてそのアイスランド。この国のことをほとんど知らないが、映画の中に出てくるヴァイキングやエルフといったキーワードから独自の気概をもったお国柄であることを思わせる。主人公の父親にピアーズ・ブロスナンを置くなど、かなり大物俳優を並べたのは、こうした歴史的背景を際立たせるために必要だったのだろう。人口500万人余りの小国からコンテストの優勝者を出すと、次年度の開催国となる。それには莫大な資金が必要となるため、有力な候補者を船ごと爆破して出場を阻止する銀行家が現れるが、実はアイスランドは金融国家で、そのことを皮肉っていることは間違いなさそうだ。

 

おかげで候補にすら選ばれる余地のない片田舎の二人が、ドタバタなどを乗り越えて本戦で高く評価されるという展開となる。ありえない話である。

 

しかしこの映画は実にシニカルに社会を写している。欧州を中心とする世界情勢の歴史といってもいいかもしれない。中でもイギリス人が全く尊敬されていなかったり、ロシアの歌手で大富豪のイケメンが明らかにゲイでありながらそれを否定したり、主人公が助けられるアメリカ人を逆に罵り倒すシーンなどがあるが、これらはほぼ世界の常識である。イギリスはかつての植民地政策の名残りがあって特に欧州ではリスペクトされていない。昨今のアメリカは言うまでもない。アメリカはしかも軍事目的でアイスランドを統合しようと真剣に交渉していた経緯がある。冷戦時代の大国、ロシアの富豪も同様で、彼らの言動を冷静に並べると、現代の国際社会が抱く本音が漏れ聞こえてくるようだ。

 

しかもこうした辛辣なセリフをアイスランド人を演じるアメリカ人(ウィル・フェレル)やカナダ人(レイチェル・マクアダムス)あたりに演じさせているあたりがユニークだ。

 

陳腐なドラマと見る向きがあるかもしれないが、冷静に見れば現代国際社会の鏡のような構造となっている映画だ。実に面白かった。

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