
結論からいうと、
とてつもなく面白かった。どういうわけかロッテントマトなどの評価は低い。しかし個人的には非常に興奮した。興奮した理由は色々あるのだが、少なくとも女性がマフィアの世界を牛耳るという展開にゾクゾクする。しかも彼女たち3人はいずれも夫がマフィアで逮捕され、途方にくれた状態から這い上がる。そして夫が刑務所から出てくると、彼ら夫たち以上に地域に支持されていた、というある種のサクセスストーリーである。

しかし話しはそう簡単ではない。
彼女たちアイルランダーは、この廃墟とまでいわれるようなスラム地区で貧しい生活をする。時代が1970年代後半と聞くと、日本は高度成長期を過ぎ
オイルショックのあたりか?あの頃、対岸の
アメリカではまだまだ貧しい地域があってスラム化が進行していたことを示す。自分の生きた時代にこのような貧困と暴力があった、と聞くと、かつて”
アメリカン・ドリーム”と言われた大国
アメリカの姿が幻想であり
まぼろしだったことを知らされる。

心を打つのは、彼女たちのキャリアだ。それぞれの夫が闇社会で生活を支えていた、という表面的な事実が冒頭にチラッと描かれるのだが、実は彼女たち3人にそれぞれの苦境があった、というのが映画を通じて描かれるのだ。それはDVであったり、人種的な問題でもあり、妻が夫を支えるという立場の逆転を妬むケースもある。今となっては些末な話題かもしれないが、この時代がある意味で
ジェンダーや
アメリカの偏見の分岐点だったのかもしれない。

ネタバレになるので書けないが、最後にいくつかのどんでん返しがあり、3人の仲も際どい局面を迎える。このあたりの描き方もまた実にうまいのだが、なにより抑圧された妻たちの生活を語るシーンは胸を打つ。夫婦生活も所詮他人。2人でいても孤独だった、というある妻の独白は重たい。人は常に孤独だ。

この三人が
ユダヤ人と交渉したり、ブルックリンのイタリアマフィアとやりとりするシーンもドキドキする。そしてこの映画のいいところはドキドキするシーンでも余計な音楽を多様せず淡々と描く傍らで、当時流行った
ハートや
フリートウッド・マックをBGMとして流すあたりのセンスだ。映画全体はドラマの展開とは裏腹に比較的静かに進む。銃殺シーンなど、残酷な展開も多いのだが、そこは演出を極力控えて静かに淡々と描く。そしてBGMに当時のヒット曲を流す。”
バラクーダ”が流れた瞬間はとても興奮した。(”
ゴールド・ダスト・ウーマン”はこの映画を象徴させている。)

実を言うと
メリッサ・マッカーシーの映画はあまり好きじゃない。
アメリカの大人気の彼女のジョークは日本人の自分にはなかなか伝わりにくい。彼女のすべりまくる演技にはこれまで乗れなかった。しかしこの映画で彼女は、これまでの
おちゃらけで下賤なイメージを払拭し、下町の貧しい妻から地域のボスになるまでを丁寧に演じている。原作とはイメージが異なるのかもしれないが、映画としては彼女以外にこの役をイメージすることは難しい。とても素晴らしかった。
それにしても世間の低い評価が気がかりだ。
最近殊に思うことだが、いろんな映画ファンのレビューなどの評価と自分の評価に隔たりを感じる。
(=^・^=)
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