Swallow スワロウ
美しい映画だった。とにかく美しい。主人公のヘイリー・ベネットが美しいというだけでなく、ありとあらゆるシーンが美しい素晴らしい映画。映画館の大きなスクリーンに小さなビー玉や画鋲がこれほどまでに大写しにされたことがあっただろうか?その見事な接写にまずは圧倒される。大自然の美しさ。物が光に溢れる美しさ。鏡に写る物質の美しさに人の表情。ヘイリー・ベネットのどアップが幾度となく映し出される。彼女の健気で美しくそして寂しげな表情、その瞳と唇が大画面に写される奇跡。これぞ芸術だ。
むしろ悲惨な彼女の内面を絞り出すような悲しい映画だ。なぜ彼女がそれほどまでに虐げられることになったのか?彼女の奇行と彼女を取り巻く環境と生い立ちがじわじわ映画の後半に進むに従って明らかにされてゆく。
彼女が追い詰められた理由(わけ)を察するに従って、お腹に子供を抱えた母親の孤独が浮き彫りになる。しかしマタニティーブルーを描くだけの映画にとどまらないスケールが後半に押し寄せる。彼女の奇行を心配して、家族が呼び寄せたお手伝い(という名の監視者)がシリア人であることが、この映画の本質を解くカギとなっている。映画の中でそのことは具体的に触れられることはない。しかしシリア出身のこの人物の行動が主人公の女性の苦悩を代弁するのである。
世界はまだまだ分断されている。いや分断した原因はどこにあるのか?
複雑な環境を掘り下げるには余りある傑作である。
そしてヘイリー・ベネットの素晴らしい演技。彼女の表情を追いかけるだけでも十分価値のある映画だ。
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