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しょうもない

ルディ・レイ・ムーア 

『Dolemite Is My Name(原題)』ルディ・レイ・ムーアエディ・マーフィが演じる。

ド素人の作る映画の話。全く知らない世界だった。すごいカルト映画。

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さえない腹が出た中年をエディ・マーフィが演じているというのが皮肉だ。『星の王子さま』だったはずだが地に落ちたものだ。生真面目なバーで司会をする中年男が、下品な本音を語りだすことで一気に人気爆発になって、ついには映画まで作ることになる。

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とにかく無茶苦茶な話なのだ。映画のストーリーも無茶苦茶だが、クンフーを交えたりするなど脈絡がない。あまりにも荒唐無稽の映画で、これでは日本で公開されないだろうという映画。だがしかし、いまこの映画を振り返ると、ちょっと感じ方が変わってくる。

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ときは1970年代。自分も多感だった頃だから覚えているのだが、アメリカは自由で夢のある国だった。その中でまだまだこのような黒人に対する偏見があったことを知る。この映画の中でそのことは直接的に描かれていないのだが、明らかにこれは黒人が白人をコケにする映画なのだ。『ブラック・クランズマン』の主題でもある。ここが実に面白いのだ。

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 そして何より、しょうもない映画を真剣に撮ろうとする意思がすごい。この救いのない自主映画をなんとかして世間に伝えようとする意思。この勢いが素晴らしいのだ。世間にはいま映像が溢れている。どこにいても誰でも映画やドラマを見ることができる。しかしネットもなくテレビの普及がそこそこの時代に、映画を作ろうとする意思。このハートがすごいと思う。

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最後に映画館の前の行列にいる子供とラップするシーンは感動を呼ぶ。彼がラッパーのさきがけであることがここでわかる。そして彼の言葉の裏側には路上生活者から拾ったネタが盛り込まれている。それはアフリカから黒人が奴隷としてこの国に移り住んで、様々なビハインドを生きてきた歴史が吹き込まれている。こうしたささやかな構成もまたこの映画の魅力だ。

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冷静になると、日本映画はもはやテレビ局や映画会社が漫画を原作とする企画を下ろしてきて映画を低予算で撮るというスパイラルにあって、自らの意思でなにかを伝えようとする(できる)映画監督は皆無だ。少し前の『カメラを止めるな!』のよな意思のある映画がない。それを思うと映像メディアの環境が劣悪だったこの時代に意思を貫いたドールマイトのかっこよさが際立つ映画に圧倒された。
(=^・^=)
 
 
町山智浩さんの『映画ムダ話』より抜粋。
 
・ピンプ(成金の金持ち風)を描く『ザ・マック』という映画は『スカーフェイス』に影響している。
・『黒いジャガー』が当時大ヒット。黒人刑事が白人の麻薬犯と戦う話。
・ブラック・スプロイテーションは失速して、ブルース・リーに人気が集まる。クンフーを混ぜた黒人映画にシフトしてゆく。『燃えよドラゴン』にも黒人が出ている。
ブラック・スプロイテーションのブームが過ぎてから作られたのが『ドールマイト』。
・路上生活者からネタを拾うのは本当の話。黒人の民話、アフリカから語り継がれた話などを盛り込んでいる。ラップのリズムもこの言葉遊びから生まれたらしい。(賢い猿がライオンに意地悪する話はイソップに似ている。『トム・ソーヤの冒険』にも民話は影響している。
・”シグニファイド・モンキー”はイソップ。イソップは実在人物でアフリカの奴隷だったと言われている。
・”ドールマイト”はすごい黒人の話。誰も手を付けられない悪党。アフリカに行って動物までやっつける男。
・撮影監督ニコラス・ジョセフ・スタンバーグで、なんとあのスタンバーグ(『嘆きの天使』)の孫。

 

 

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