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しょうもない

日本史の探偵手帳 磯田道史著

武士の家計簿』という名著は森田芳光監督により映画になった。(森田監督についてはいつかまた書こう。)『殿、利息でござる!』もまた磯田氏の原作がベースになっているようだ。実に面白かった。武士の年収を現在価値に代え、江戸末期の武士が収入の2倍の借金を抱え、高利の支払い続けていたことが示されていた。(江戸幕府は下級武士の力をそぎ落とすことで維持されてきたのである。)しかしこれ、奴隷のように会社に帰属するサラリーマン家庭と何ら変わりない。

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原作者の磯田道史氏は浜松在住で親近感がある。そして『武士の家計簿』などの著書が示すとおり、磯田氏は徹底して江戸時代以前の経済を現在価値に置き換えて検証している。そこが最も面白い。4章からなるこの本で最も惹きつけられたのは第1章の部分で、経済を掘り下げることで日本社会そのものを読み解こうとしている点が魅力的だ。

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家制度が中心の社会は世襲で何もかもが決まっているため、何の努力をしなくても武士は武士となる。だから制度が変わった頃、武士は農業も商業もままならず大変な苦労をしたらしく、危機の時代に彼らが努めたのは「教育力」だった、というのは納得できる。家督制度でなくても、現行の官僚主義的な仕組みは、いつなんどき崩壊して価値観が変わるかわからない。ただ単に時間で仕事に拘束されて「のほほーん」と過ごしてきた時代は、コロナで広まったテレワークの普及で、さらに業績一途の社会、あるいはジョブ型雇用の時代へと突き進むことだろう。

 

ダグラス・ノースの「経路依存」という著書からの引用で「経済制度は、前の制度にとらわれながらしか発展しない。」といい、官僚制度に対しては「国家は時代ごとに湯水の如く金を喰う部門を持つ。」と示している点が面白い。荻原重秀の経済政策を、現在の日銀に照らしているのも読みごたえがあった。当時の財政政策は、寺の建立だったらしい。寺という公共事業を広めることで、雇用を生み出したり流動性を高めたりしたらしい。荻原重秀の「金銀は神ではない。国家の信用が神」という言葉はうんちくがある。

書き出すと止まらない、実に面白い本。幕末から第二次世界大戦まで、日本のエリートがなぜ誤った方向に舵をきったか?などについても言及されていてとても面白かった。(=^・^=)

 

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