ノマドランド Nomadland
冒頭のテロップは衝撃だ。ある街の企業が不況で倒産して、地図から”郵便番号が消される”という恐ろしい事実を伝える。
家と夫を失ったファーン(フランシス・マクドーマンド)が放浪しながら行く街で臨時の職業で働いて、次の街へと進んでゆく。そのときに写されるアメリカの大地と自然がときに希望をほのめかし、ときに残酷に押し寄せてくる。
ときは2010年頃の話。ここがポイントだ。
ケン・ローチのアプローチとは少し印象を変えつつも、極めて芸術的にアメリカのラストベルトから派生する貧困とその原因を示している。まるで『フラガール』のような経済損失は、街全体を喪失させてしまうという現実。かといってこうしたアメリカの実情を必ずしも悲劇的に描いているわけではない。
なんとこの映画でプロの俳優はこの二人だけで、あとは実在するノマドたちとともに過ごす日々が描かれている。
ノマドの支援者であるボブという穏やかな人物の告白。「自分の息子が自殺してたことをきっかけにノマドを支援することにした。人は貨幣経済に巻き込まれているが、それが人生ではない。」というようなことを語るシーンが感動的だ。まるで『ムヒカ 世界でいちばん貧しい国から日本人へ』を連想する。
これは映画館で見るべき映画である。
この風景の中で静かな静かな映像と光、これらを受け入れるためには、可能なかぎり大きな映画館で鑑賞することでより一層感動が高まるものだろう。
アカデミー賞に新しいジャンルが生まれたのかもしれない。
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