彼女 Ride or Die
『Ride or Die』が英語タイトルで、これはリドリー・スコットの『テルマ&ルイーズ』などを連想する。女性同士の愛を描いた映画というとパトリシア・ハイスミスの『キャロル』などたくさん印象深い映画が思い出されるが、最近だと『アンモナイトの目覚め』とか、昨年の『燃ゆる女の肖像』のクオリティがかなり高い。芸術性の高い作品が多く見られる。
本作は漫画「羣青(ぐんじょう)」が原作だそうだ。かなりきついドラマらしい。映画は原作をほぼ踏襲して、コンパクトにまとめた作りとなっているようだ。
様々な見方のできる映画で秀逸だ。冒頭の衝撃的なシーンも過激だ。血しぶきとワインなどの対比。2人の女性の中に通う血液、それは女性特有の”血”という意味においても映画の軸となるイメージで、水原希子さん演じるレイの髪が赤いのも理由がある。血は争えないという意味でこの映画の根底にあるテーマは「格差」なのだと思う。これほど慕い合い思いを寄せ重ね合う2人の愛情は交わらない。これがテーマだと思った。
七恵という貧しい家の少女が高校の同級生でレイと出会う。万引きしたところをレイに救われ、学費まで面倒をみてもらう。10年後に喫茶店で300万円を返したコーヒー代を割り勘にするシーンがある。後に七恵は「割り勘で対等になれた」と話すが、性の関係においても対等でありたいと2人は思っている。
しかし違う。
2人の背景は変わらない。逃げて逃げてレイの家の別荘に潜入するが兄と兄嫁に見つかり自首することをすすめられる。この映画でもっとも印象的で感動的なシーンがここかもしれない。妊娠中の兄嫁が2人の逃走を見逃したとき、夫(レイの兄)に「うち人殺せるで」と抱き着くシーンの感動はなんなのだろうか。兄嫁が人殺しのレイと七恵をかばうのは、二人の強い愛情を目の当たりにしたからだ。映画でははっきり示されていないが、この兄と兄嫁の関係も恐らく微妙な関係なのだろう。子供を身ごもった母親の孤独は『スワロウ』でも示されるとおり孤独だ。孤独な兄嫁の心境が本当の愛のために羽ばたこうとする二人を後押しするのは自然だ。とてもいいシーンだった。
個人的には烏丸せつこさんが出てくるシーンがとても好きだ。『四季・奈津子』で示した若き日の彼女は自立する女性には未来に夢があった。翻ってこの映画、現代の女性は(女性に限らず)希望がない。あみだくじを引いても全部「行き止まり」。この絶望的な世界で交わることのない愛を貫こうとする二人の健気さは極めて矛盾に満ちている。矛盾の中で求め合う禁断の愛こそが本当の愛だ、と作り手は伝えようとしているのではないか。
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