dalichoko

しょうもない

タイム TIME

Amazonドキュメンタリー映画タイム』を鑑賞。町山智浩さんがちらっと紹介していて興味をもった。監督はギャレット・ブラッドレイとい女性。1984年生まれのち的な女性監督による作品。ある黒人家族の20年以上に及び長い長いホームビデオを編集し、それに映像を重ねたモノクロ映画。モノクロであることのに意味がある。

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この夫婦はなんと「銀行強盗」である。

 

といっても『俺たちに明日はない』のような暴力的なものではなく、生活が苦しくてやむなく強盗をせざるを得なかった、ということらしい。このあたりはあまり映画では語られない。問題はこの夫婦が刑務所に服役して、夫のロバートがとてつもなく長い懲役に服することになる点だ。妻のシビルは3年半ほどで釈放されるが、彼女が何度も再審請求をしても夫は保釈されない。”黒人だから”という理由で刑が重くされていることが示されてゆく。ここが時代性というものだろうか。アメリカがトランプ政権になってから、明らかに黒人(そして黄色人種を含む人々も)に対する偏見が強くなっている。『隔たる世界の2人』も広い意味では同じことを言っている。

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子供6人を抱えた母親のシビルが、車の販売外車で成功して子どもたちを立派に育て、夫の再審請求を何度も繰り返しながら、地域コミュニティなどと連携し、勝利を得るまでのストーリーとなっている。しかし、何度も何度も裁判所へ電話しても、電話すらまともに取り次いでくれない。その理由はどうも”黒人だから”ということらしい。

 

それでもシビルは子育てや仕事の忙しさに愚痴もこぼさず、明るく丁寧に生きていく。子どもたちは立派に育ち、自らの仕事も成功してゆく。黒人女性がなにかをしようとしても社会の階層化によって押しつぶされる。それにはパワーで対抗するしかない。刑務所の劣悪な対応もまた語られる。黒人に対しては奴隷のように扱われる。

 

いっこうに取り次いでくれない裁判所との電話を切ったあと、この映画で唯一感情を露わにする。”Sccess is a best revenge.” 彼女は感情を抑制し、冷静に自分の成功が社会に対する復讐になることを熟知している。『13th 憲法修正第13条』にもある通り、どんなに世間が平等や公平を言葉にしても、制度に抜け道がある以上マイノリティに突破口は開かれない。そんな実情をこの映画は教えてくれる。

 

しかし映画はこうしたシビアな題材を扱いながらも明るく描かれる。ひとえにシビルの性格もあるのかもしれないが、映画自体は社会批判を軸に置いていはいない。むしろ家族の強い絆を延々と描いている印象だ。『なぜ君は総理大臣になれないのか』という映画にも同じような感じがした。主題とは別の家族関係に魅せられてゆく。それはいずれも長い長い時間をかけて撮られた映像の中に、子どもたちの成長があるからではないかと思わせる。子供は未来への夢だ。

 

シビルが強盗を働いた銀行に謝罪しに行ったときに言われた言葉が強烈な印象を残す。

 

「私達より、あなたのお母さんに誤ったの?」

 

要するにこの映画は謝罪(Forgive)の映画なのである。ここがこの映画の監督のセンスだろう。単なるサクセスストーリーや単なる黒人への偏見に対する問題提起としてだけなら、これほどの感動はない、罪と罰の間には必ず”許し”があるということだ。失敗は誰にでもある。しかしその失敗を個人の責任として押し付けるだけでは犯罪行為は終わらない。二度と繰り返さない仕組みづくりが求められるのではないか。そのための”許し”というのは、極めてキリスト教的である。そしてこの監督が宗教学を専攻して学んだことがこの映画に生かされいるような気がする。

 

 

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