彼岸花が咲く島 李琴峰 第165回芥川賞
こちらは断然面白かった。すごく面白かった。
どう説明すればいいのかわからないが、とにかく素晴らしい作品だった。
記憶を失った少女が彼岸花が咲き乱れる島に流されているシーンから始まります。この小説は極めて映像的です。映画にすることも可能かもしれない。もしそうだとしたら、この島はきっと沖縄が舞台になるだろう。そうだ、『神々の深き欲望』や『夏の妹』が描かれた島。しかし小説では、どこの島かは語られない。
流された少女に名前はない。彼女が最初に出会游娜(ヨナ)という同じ年頃の少女。そしてもうひとり拓慈(タクジ)という少年の三人がドラマをリードする。
記憶のない少女は宇実(ウミ)と名付けられ、島のお祭りや言葉に馴染んでゆく。この不思議な言葉の行き来が実に新鮮だ。このドラマには言葉が大きな意味を持つ。
この島を司るのはノロという女性たちで、最も権威のなる大ノロという老女とのやりとりでこの三人の少女と少年の運命が少しずつ変わってゆく。この島の歴史、この島が抱えた過去。そうした背景がドラマに大きな影響をもたらしている。
なぜこの島の指導者が女性なのか?
二人の少女もノロとなるために学ぶ。でも男のタクジにはその資格がない。その秘密が最後に明かされるのだが、ここはとても深い意味がある。敢えて例えるならそれは”ニホン”だ。この世界から取り残されたニホンの現状を痛烈に批判する。しかしドラマはそれを直接的に語ることはしない。柔らかく優しく描かれていく。
著者の李琴峰さんはすごい。31歳の台湾人。早稲田大学を卒業されている。天才だと思う。彼女は受賞のインタビューで「私をカテゴライズしないで」と主張しているように、彼女には本能的に現状を維持する思考がないのではないかと思う。どんどん変化してどんどん進化する。女性首相の台湾と、あいも変わらずジジイが首相のある国を対比させつつ、その中間にあるような沖縄などをイメージさせ、男尊女卑社会の恐ろしさを示しているのだ。頷くしかない。
彼女には期待したい。そしてまた彼女の語り口で描く世界を覗きたいと思わる小説だった。
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貼りました。みつけてみてくださいね。