人新世の「資本論」 脱成長が世界を救う
人新世の「資本論」は、気候変動と資本論を結びつけるため、マルクスの大転換の理由を考察し、資本主義の弱点を鋭く突いた。そして結論としてドーナツ経済と同じ”脱政党”に行き着くのだが、さらに根源的な取り組みの必要性を最後に指摘する。
もう遅い、ということを前提に。
第七章 脱成長コミュニズムが世界を救う。
コロナも「人新世」の産物ではないか?と著者は指摘する。すなわち資本主義、特に行き過ぎた新自由主義経済政策は、国家が民主主義をと地球環境を犠牲にした。ワクチンですら人の命を救うよりも利益(儲け)を優先している。日本の政治はワクチンを高い価格で外国から購入してマージンを受け取る。彼らは命より金が大事なのだ。そして貧富の格差は広がってゆく。余談だがアベノマスクもデジタル庁のへんてこなCMも全て税金の無駄だ。これらは電通を経由して政治家に献金されてゆく仕組みの一部だ。(日本はもう電通の支配下である。)
著者は資本主義を捨てて労働の形態を変えないと、地球は滅びると言っている。その意味でドーナツ経済は資本主義を捨てていない点で不十分だという。
第八章 気候正義という「梃子」
最後に著者はバルセロナの取り組みを紹介する。単なる掛け声だけの気候非常事態宣言ではなく、「フィアレス・シティ」という脱成長社会を具体的に生み出すために何を推進するかというと、なんと経済システムを変えようとしているそうだ。観光都市がこのような取り組みに真剣に取り組んでいる。スペインという国からの指示を待っていても変わらないから、自らの都市がコモンを組んで、市民による新しい取り組みを薦めているらしい。これらは具体的に気候正義に叶うやり方を模索するものだ。
ということで、もう遅いのである。このまま今の仕組み、資本主義を維持したままでは地球は加速度的に崩壊してゆく。ではそれを止めるためにどうするかというと、資本主義を捨てて、気候正義に生きるしかない、というのである。
かなり手厳しい思想と言えるが、それはマルクスの転換に示すとおり、もはや地球は悲鳴をあげて瀕死の状態にあることを理解すれば自ずと理解が及ぶのだと思う。
余談だが、バルセロナでオリンピックが開催されたときが忘れられない。音楽監督が「カタルーニャの鳥の鳴き声はピース、ピースと鳴く。」という言葉が示すとおり、五輪が平和の象徴となることを目指した作り手の意思が伝わる大会だった。ではここでいう平和(ピース)とはなんぞや?となる。平和、この言葉の先には”地球”という言葉が続くのではないだろうか。もはや人は地球の奴隷となるときがきた。そう思わせる著書であった。
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