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しょうもない

モーリタニアン 黒塗りの記録

公開週にキネノートでいきなり一位(ちなみに2位は『コレクティブ』)に躍り出た。奇しくも政治に関する映画が連続して高評価を獲得するのは、総選挙の影響が多少なりともあるのだろうか。この『モーリタニアン 黒塗りの記録』もまた内部告発の映画だ。
先ごろ名古屋税関管内でスリランカ女性が亡くなった事件があって、その時の情報公開請求に対する”黒塗り”の開示が話題になったが、この事件に限らず、この映画の言わんとすることはずれも同じ。広く解釈すれば”表現の自由”を扱ったものだと認識させる。
先に結論めいたことを書くと、表現が不自由な日本ではこの映画を作れない

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911テロ容疑で不当に監禁されたモーリタニアのサラヒを巡る物語。またまた実話である。ドラマは対立してこそ面白い。今回は、テロリスト(かもしれない)人物を弁護する弁護士ナンシー・ホランダーと助手のテリーに、身内をテロで失った国防総省の軍検察官カウチ中佐の関係を描く。

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ジョディー・フォスター演じる弁護士のナンシーは、サラヒが公判も受けずに長年に亘り拘束されていることを突き、検察官のカウチはサラヒを死刑にするために仕事を引き受ける。それぞれの思惑は、ブッシュ政権の時に作られたグァンタナモ収容所に拘束されているサラヒの証言にかかっている。

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サラヒが本当にテロリストと関係があったかどうか、という点について拘束した軍の記録が黒塗りにされて情報公開が適切になされない、という難問が立ちはだかる。情報公開を求める弁護士側と、サラヒを有罪にした検察側が双方非公開情報を求めて戦い合うというストーリーだ。

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この映画の中心はサラヒだ。彼が本当に強引な尋問を受けたかどうかが隠されていることを掘り下げてゆく。映画のスクリーンがワイドとテレビサイズに伸縮して、彼の過去と現在を対比させる工夫が施されている。

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この映画は実話なので、実在の人物の名前がそのまま使われている。中でもサラヒ側が訴える相手はアメリカ合衆国ジョージ・ブッシュラムズフェルドだというあたりは、際どい表現だ。このあたりは日本で同じような映画やドラマになりにくいだろう、スポンサーが金を出さない。アメリカはその点、政権交代があれば遠慮なく実名で映画化される。『バイス』という映画でも副大統領のチェイニーをこき下ろした。

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ジョディー・フォスターと聞くと尋常ではいられない。彼女が子役の頃から期待して応援してきた。『ダウンタウン物語』の公開で来日したときは映画館まで舞台挨拶を見に行った(もちろん劇場には入れなかったが・・・)ほどのファンだった。TV版の『ペーパームーン』も大好きで毎週見ていた。『タクシー・ドライバー』の子供の娼婦役は衝撃だった。その後の活躍は言うまでもない。
 
この映画で教訓めいたことを言うのは控えるが、この映画が事実であろうとなかろうと、現象を片側から見ていては真実に近づけない。しかも真実は必ずしもひとつとは限らない。暴言を恐れずに言えば、911テロを演出したのはアメリカであり、その中心がブッシュだった、つまりあの大惨事で多くの命を奪ったのはブッシュだった、とするのは間違いだろうか。そうすると、ブッシュのお友達だった当時の日本の首相だってイギリスの首相だって広い意味では同罪だ。彼らは人殺しなのではないだろうか。こういう映画に挑むジョディー・フォスターベネディクト・カンバーバッチ(『クーリエ』の好演も光る)は、彼らの立場を明らかにしていてその姿勢には好感が持てる。
 

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