dalichoko

しょうもない

エッシャー通りの赤いポスト

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エッシャー通りの赤いポスト』は園子温監督の新作だった。試写会で鑑賞。


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こんな映画がまだ作れるのかと感動した。園子温監督の群像劇。ほとんど無名の俳優を集結させて、極めて政治的なドラマとして突きつけている。
いわゆるループものだ。『仮面』という映画のオーディションで役を狙う多くの市井の人々の群像劇。タイトルの意味などを推測すると、エッシャーは騙し絵で、赤いポストは目立つことの意味。誰にも知られない無名の人々が自分の存在を世間に示して目立ちたい、主役になりたいという意思の代名詞だ。そして『仮面』。これはベルイマンの映画『仮面ペルソナ』を連想させる。その後の多くの映画に影響を与えた先進的な映画。それは人の中にある多重性を意味する。仮面の裏側にある自分と社会の関係を表すものだ。

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とにかく大勢の人物が交錯するとんでもなドラマだが、このドラマの軸は若い人たちの爆発だ。それぞれの人物がとてつもないエネルギーで衝突しあう。そして1本の映画を撮ろうとする映画監督に大きな圧力がかかり、キャスティングに介入がある。それを撮影現場でひっくり返すというとんでもない展開になるのだが、最後の商店街で繰り広げられるハチャメチャな演出は見たこともないものだ。

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特にラストカットには胸を締め付けられる。あの瞬間、映画が終わった瞬間に驚きとともに涙がなぜか溢れてくる。ネタバレで書けないが、あの一瞬は何を示すのだろうか。大島新監督の『園子温という生きもの』というドキュメンタリーにその答えが滲んでいる。忠犬ハチ公をフェイクして渋谷でゲリラ的に作品を展示しようとして警察にしょっぴかれてゆく園子温監督。あの映画の園子温を見ると、この映画の過激さ、園子温の根底に流れる意思と姿勢がわってくる。

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この若き未来のある俳優たちを、天才園子温がより過激に演出する姿がスクリーンにぶつけられている。そしてそこに映る恐ろしい社会の現実を我々は最後の最後で目の当たりにするのだ。日本映画の衰退は目を覆うほど深刻だ。それはテレビなどを見れば肌触りのいいお笑い番組が並び。まるで管制社会を想像させるものだ。この国は完全に表現の自由を封鎖された。社会や政治に対する批判にスポンサーがつかないからだ。そうした軟弱な社会、無批判で無気力化した社会に対し、痛烈なメッセージをこの映画はぶつけようとしている。
この低予算映画は、きっと大きな劇場にかかることはないだろう。しかし、園子温監督の意思に戦う姿勢がある以上、まだまだ映画は大丈夫なのではないか?と希望をもたせる映画だった。感動した!泣いた!そして怒りがこみ上げてくる。
 
 
 
 

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