悪なき殺人 EULES LES BÊTES
英語タイトル”Only the animals"が生きている。
『悪なき殺人』という邦題もまた間違いではないし、そのとおりなのだが、この映画でいうアニマルとはなんだろう?と思う。実際に出てくる動物は飼い犬ぐらいだ。そしてこの犬の存在は極めて重要。しかし問題はこの犬ではなく人という動物の恐ろしくおぞましい欲望、欲求、嫉妬、羨望などが複雑に交錯する。次から次へと繋がる物語の集結は驚くようなものだ。人種、偏見、格差、貧困などもこのラストシーンに込められている。つくり手の才能と現代に突きつける強いメッセージが示される。
この映画は、”愛は交わらない”ことを丁寧に描く。一瞬燃え上がる愛もすぐに鎮火する。そしてお互いが惰性の中で生きるうちに、いつしか新しい関係に目覚めてゆく。そんな男女関係の中に、この映画ではあるトラップをしかける。実在するかしないかわからないバーチャルな人物を介することで、愛のカタチがどんどん変化してゆく。単なる犯人探しで終わらないところがこの映画の価値だ。素晴らしい映画だった。
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貼りました。みつけてみてくださいね。