dalichoko

しょうもない

悪なき殺人 EULES LES BÊTES

英語タイトル”Only the animals"が生きている。


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悪なき殺人』という邦題もまた間違いではないし、そのとおりなのだが、この映画でいうアニマルとはなんだろう?と思う。実際に出てくる動物は飼い犬ぐらいだ。そしてこの犬の存在は極めて重要。しかし問題はこの犬ではなく人という動物の恐ろしくおぞましい欲望、欲求、嫉妬、羨望などが複雑に交錯する。次から次へと繋がる物語の集結は驚くようなものだ。人種、偏見、格差、貧困などもこのラストシーンに込められている。つくり手の才能と現代に突きつける強いメッセージが示される。

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ここに出てくる人物たちは、だれもお互いを愛さない。愛せない。愛の関係が一方通行なのだ。この写真は冒頭のシーンだ。一人で牧場を営む隔世した男と浮気する女性。この意味深な最初のシーンが絶妙だ。

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そしてこの女性二人の愛もまた一方的だ。人がお互いに愛することと、それぞれが禁断の関係にあって、その背景から離れることができない現実と対比させる。ループ構造のこの作品は、ある人物が失踪することを巡って想像もできないような偶然が複雑に絡み合う。フランスからコートジボワールまで飛躍する場所移動も驚くが、それぞれの人物の微妙な関係の描き方が見事だ。アエハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥやアスガー・ファルハディなどの映画が思い起こされる。彼らもまた、全く関係のないいくつかの場所と人物が最後に繋がってゆくさまを描く。この映画もそうだ。

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この映画は、”愛は交わらない”ことを丁寧に描く。一瞬燃え上がる愛もすぐに鎮火する。そしてお互いが惰性の中で生きるうちに、いつしか新しい関係に目覚めてゆく。そんな男女関係の中に、この映画ではあるトラップをしかける。実在するかしないかわからないバーチャルな人物を介することで、愛のカタチがどんどん変化してゆく。単なる犯人探しで終わらないところがこの映画の価値だ。素晴らしい映画だった。
 
 
 

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