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しょうもない

新聞記者 Netflix 藤井道人

映画とこのNetflixシリーズは重なっている。映画で描ききれなかった部分をこのシリーズで細かく補おうとしている姿勢がいい。Netflix版『新聞記者』全6話。映画同様藤井道人監督が河村光庸氏の企画を受け入れて作ったようだ。

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物語の詳細はこの際どうでもいいことで、映画『新聞記者』をこのテレビシリーズは何をどのように発展させたのか?ということに意味があると思う。ぐいぐい進む圧倒的なドライブ感のある素晴らしいドラマだった。
 

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『新聞記者』が軸のドラマだが、今回最もシンパシーを感じたのは新聞配達員のシーンだ。奨学金で大学に通う二人、横浜流星さんと小野花梨さんと、新聞配達店のご主人をでんでんさんが演じていて、このあたりのシーンが興味深い。新聞配達と新聞記者がどのように繋がるのか、というミステリー的なリードがまたうまくできている。そして全く政治や新聞に興味を持たない新聞配達員の成長が描かれる。さらに、コロナがこの二人の命運を分けてゆく。小野花梨さんがバスに乗って去ってゆくシーンは涙なくして見られない。「人生はあらかじめ決められている」とつぶやくシーンもまた痛み入る。
 

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とにかく今をときめく素晴らしい俳優陣がこのドラマを支えるのだが、最もインパクトがあったのはユースケ・サンタマリアさん演じる広告代理店。この存在が国を動かすという恐怖。その冷徹さは見ていて不愉快になる。すごい演技だ。
そしてなんといっても、田中哲也さんが映画と同じ役で登場したときは背筋が凍る思いだった。映画とNetflixで共通する役はおそらく田中哲也さんの役だけだろう。これまた国家を守るための官僚の恐ろしさを示す。綾野剛さんに詰め寄るシーンは胃が痛くなるようなシーンだ。
他にも名古屋の検察官を大倉孝二さんが演じている。どちらかというとひねった役が多い大倉さんだが、今回は上からの圧力に反発する検察官を演じている。その誠実さが実に素晴らしくて感動する。
 
このドラマは、国家のトップが全てに対して強い圧力をかける仕組みを掘り下げる。この日本の政治の無力感はどこにあるのか?という問いを構造に見出そうとしているところが複雑だ。官僚も検察も財界もメディアもなにもかもが政治に忖度する社会。政治家は全員悪人で、その手はすべてに広げられている。悲しいことにそのことに最も無関心な国が日本だ。
 
よくテレビなどを見ればわかるだろう。
テレビで政治が語られることはほとんどない。お笑いとバラエティ番組だけが垂れ流されて、選挙期間は肝心の政治討論なども許されず、与党に阿るタレントのような評論家が大きい顔をしている。そんな国の未来を不安にも思わない国民。無気力化された国民の姿の代表を新聞配達員に置いた切り口がこの映画の要だ。
ラストシーンは「このドラマはフィクションである」と示して、それを黒塗りにするあたりの過激さを評価したい。
町山さんは、ある人物が寝たきりになって言葉も話せない植物状態になっているシーンを、日本人の象徴として描いていると断言している。なるほど大きくうなずく。この国の国民は、ほとんど植物状態なのだ。
必見である。
(=^・^=)
 
 

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