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しょうもない

与太郎戦記 春風亭柳昇

お弟子さんの春風亭柳之助師匠とお近づきにさせて頂いた時、当時の柳昇師匠のことを教えて頂いた。柳之助師匠が初めて吉祥寺の(今はなき)バウスシアターで柳昇師匠の落語を聞いて衝撃を受けた、というお話からいろいろ尾ひれがついて、たまたま銀ブラならぬ神ブラ(神保町をぶらぶら)していてこの本を三省堂で見つける。1,100円。当時1987年に発売された値段と一緒。

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本を読みながらこれほど笑ったり泣いたりしたことがあっただろうか。とにかく面白かった。
よくよく調べてみると、与太郎戦記には続編もあって、しかもフランキー堺を主演にして映画化までされている。
本の中にも出てくるが、柳昇師匠は戦争で指を失っている。そのなまなましいシーンもあって、戦争が愚かなことであることは誰もがわかっていることだ。しかしそれを笑いにかえて「バカバカしい話し」として伝えることに価値がある。

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昭和16年に入隊してから終戦まで、どこかで聞いたことのあるような戦記ものではあるのだが、柳昇師匠のお話にはどこか「バカバカしさ」を織り込んでいる。入隊するときの検査から始まって、訓練中に馬の世話をしたり、パラチフスに感染したりとドタバタが続く。

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恋愛や遊び心のシーンもまた面白い。訓練中にお世話になった民宿先のお嬢さんと映画に行って手をつなぐまで50分もかかったウブな話しから、従軍中の慰安所でお世話になった話しなども面白い。柳昇師匠らしいとぼけたお話が続いて大笑い。
 

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上海から香港に戦艦で移動するときに船酔いに苦労した話しとか、中国人の少年と親しくなったりとか、戦況が悪化する中でも色々な出会いや交流が微笑ましく示される。戦闘シーンはリアルだ。しかしそれも笑いにしてしまうところがすごい。上官に水をかけようと間違ってガソリンをかけて炎上させてしまったり、おかしなシーンが満載だ。

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しかし戦闘中は笑ってばかりもいられない。新たな戦艦に乗船命令が出て、15人の下士官を選ぶのに悩んでいたら年上の部下が「一緒に行きますよ!」と声をかけてくれて涙を流したシーンはもらい泣き。柳昇師匠の人柄が部下に伝わったのだろう。戦争で戦友を失い、自らも負傷してようやく帰還してから病院でお世話になった看護婦さんに和歌を贈るシーンも爆笑だ。
”国のため、傷追いたれど悔いはなし 優しき君の看語受ければ”
に返歌があって
”君のうた しみじみ読んで気づくのは わずかの中に 誤字が二字あり”
これらは動画や音声などでも聞くことができるが、話芸だけでなく分筆についても才能があった柳昇師匠の才能を遺憾なく感じ取ることができる名著だ。
 
 

 
 

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