ナイトメア・アリー ギレルモ・デル・トロ
まずこの映画の登場人物、キャスティングに驚く。製作にも関与しているブラッドリー・クーパーはもちろんだが、共演の多いケイト・ブランシェットとルーニー・マーラのほか、デル・トロ監督作品の常連や意外な人物がここに並ぶ。前作『シェイプ・オブ・ウォーター』でアカデミー賞を獲得した効果と言えるかもしれないが、それにしても見世物小屋の物語にこれだけ大勢のスターが集うことがすごいと思う。
原作は1946年にウィリアム・リンゼイ・グレシャムが発表し、同名の映画が翌年タイロン・パワー主演で映画化されている。グレシャムという人物はユダヤ人でアルコール依存症に悩まされ、53歳で睡眠薬の過剰摂取で死んでいる。世界大戦直後に書かれたこの作品には、そうした彼の人生が背景として描かれている。
冒頭で主人公のスタンが布に包まれた遺体をひきずる音で始まる。そして彼はその遺体を家の中心に掘った穴に放り込み、家に火を放つ。荒れ地の家を炎上させて去る主人公の姿が印象的に描かれる。そして彼が向かうのは見世物小屋だった。
この見世物小屋のシーンはいかにもデル・トロだ。彼がまだアマチュアだった頃、『エクソシスト』の特殊メイクアーティストに手紙を書いた、というエピソードは有名で、ほかにも日本の小泉八雲や水木しげるなどに夢中になったということから察すると、時として人が目を背けたくなるような人物などにフォーカスする姿勢が彼のベースにあるにではないか。そして前作の『シェイプ・オブ・ウォーター』で彼の嗜好は頂点に達し、その成功でこれだけ多くの著名な俳優がここに集ったということだろう。
ラストシーンの衝撃もまた見ものだ。
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