dalichoko

しょうもない

草笛物語 葉室麟著

感動で打ち震えて涙が止まらない。
葉室麟さんのことをほとんど知らない中で、幾度か葉室さんの作品を読むにつれ、彼の優しさとぶれない軸のようなものを感じさせてくれる。いまもはや晩年を過ごそうとする身である自分にも、残り少ない命の時間を示してくれるようだ。
 
この『草笛物語』をひとことで示すなら、巻末の解説を書いている内容麻里子氏の「若い世代に命が続くことをうたいあげた物語」が最もしっくりくる。内藤さんの言われるとおり、この物語の主人公をはじめ、男も女もそれぞれに覚悟を決め、人々の罪を背負う、というまるでキリストがゴルゴダの丘を登るような世界を指し示してくれる。
 
今さらだが驚いたのは、この作品が『蜩ノ記』シリーズの最後だということだ。この本が出た2017年に奇しくも葉室麟さんは亡くなられているのだが、あの黒澤明監督の元で学んだ小泉堯史監督の『蜩ノ記』から16年後の話がこの『草笛物語』となっていたのだ。

 

映画 蜩ノ記 DVD [レンタル落ち]

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  • 発売日: 2015/04/08
  • メディア: DVD
 

 

主人公の赤座颯太は13歳で元服前。同じ年に父と母を亡くして失望しているのを、縁があって『蜩ノ記』で戸田秋谷に心酔する檀野庄三郎の家に引き取られる。羽根藩の後継争いに颯太少年と、のちに若くして藩主となる吉通との友情を軸として、様々な障害を乗り越える、という物語。

 

 

蜩ノ記 羽根藩 (祥伝社文庫)

蜩ノ記 羽根藩 (祥伝社文庫)

 

 

ドラマの展開も面白いのだが、『蜩ノ記』で自ら言葉をうちに秘めたまま切腹した主人公戸田秋谷の意思がこのドラマにも大きく影響してくる。特に師匠である庄三郎と颯太のやり取りの背景には秋谷の姿勢が貫かれていて感動する。そして秋谷の娘で庄三郎の妻である薫が時々つぶやく父秋谷の言葉もまた心に染み渡る。

 

ひとは自らの辛抱はいくらでもできるが、ひとのための辛抱はわずかでもできないものだ。

 

言い得て昨今のSNS時代を滲ませる暗示。そして庄三郎が颯太に曰く、

 

まことの勇気とは相手を切ることではなく、おのれが大切だと思う人のために命を投げ出して動じない心だ。」と諭す。

 

これらのメッセージは(実現には至らなかったものの)葉室麟さんが新作に意欲を燃やしていた「デマゴーグ(揺動政治家)や暴言がはびこる社会の根本を問い直したい」という言葉でくくることができよう。葉室さんの作品のセリフは優しさそのものだ。前も悪もなく言葉を丁寧に紡ぎあげる。このブログもそうかもしれないがSNSやメディアを揺動して、表現の自由を標榜し、なんでもありの悪口雑言で傷ついたり自らの命を殺めたりする人がいる。

 

この感動はもうここでは伝えきれない。あとはお読みいただくしかないだろう。

(=^・^=)

 

草笛物語 羽根藩 (祥伝社文庫)

草笛物語 羽根藩 (祥伝社文庫)

 

 

 

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