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しょうもない

レベッカ 最後の最後まで目が離せない

かつて見たアカデミー賞作品賞を受賞したアルフレッド・ヒッチコックの『レベッカ』は1940年に公開された映画。もちろんモノクロ映画だったわけだが、意図的にぼやけた映像がこのドラマをどこか見えない重苦しい世界にいざなうものだった。
 
あれから80年が経過した。Netflix映画が昨日リリースされたので鑑賞した。

 

レベッカ(字幕版)

レベッカ(字幕版)

  • メディア: Prime Video
 
あの霧の中で展開されたような映像は鮮明な映像となり、映画全体がまるでちがうものとなって再現された。

 

Rebecca (Music From The Netflix Film)

Rebecca (Music From The Netflix Film)

  • 発売日: 2020/10/23
  • メディア: MP3 ダウンロード
 
この主人公、リリー・ジェームスには実は名前がない。「わたし」という主語で語られ、デ・ウィンター氏と結婚して初めてミセス・ウィンターとなる。ここがこの映画の主題である。この女性はいったい誰なのか?主語で語られることでこの人物の真意は語られない。
 
映画は使用人として彼女が訪れたモンテカルロで、デ・ウィンター氏と出会うところから始まる。モンテカルロの美しいホテルと風景。二人が出会い近づいてゆくまでの語り口が実に丁寧に描かれる。そしていつしか二人は強く結ばれてゆく。
 
どちらかというと貧しい身分の女性が金持ちの男性と結ばれて幸せになる、という一見ありきたりのドラマなのだが実は違う。死んだ妻レベッカの亡霊に悩まされ、妻殺しで起訴された夫を救うために奔走する健気な妻であるミセス・ウィンターだが、ラストシーンでこのドラマが本当にハッピーエンドかどうか悩ませる一瞬のシーンで終わらせている。元ミセス・ウィンターとレベッカ、そして名前のないリリー・ジェームス演じるミセス・ウィンターは実は同じ亡霊なのではないか。
 
傍らでこの映画は英国社会の厳格な格差を物語る。そして努力しても及ばない貴族社会の高い格式を明確に示す。その意味でこの映画の主人王はこの大きな屋敷を切り盛りする家政婦であるダンヴァース婦人である。彼女は死んだレベッカと幼い頃から友達のように付き合ってきた。そのレベッカが亡くなり、庶民あがりの新たなミセス・ウィンターに対する仕打ちは、あがいても貴族になれない格差を物語る。反対に、その座を手に入れたミセス・ウィンターとの対比。亡霊を巡る見えない格差の心理的争いがこの映画を格段と面白いものにしている。クリスティン・スコット・トーマスがこの家政婦を見事に演じている。素晴らしい演技。
 
原作者のフィリップ・マクドナルドは、様々なペンネームで全くことなる人種や立場の主人公をシリーズとするサスペンス小説を連作した。このことからもこの映画の主人公らの多面性と複雑な背景などが奥深いものであることを物語る。この美しい映像を見ることで、まるでラブストーリーのようにこの映画は見えてしまう。主人公の女性が様々な障害に打ち勝って夫を守るために成長する、というサクセスストーリーにも見えるが、実はこの映画は人の多面性、あるいは多重人格のような人間の深層心理を描いた作品なのではないかと思う。
 
 
 
 

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