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しょうもない

ソング・トゥ・ソング

ホモ・サピエンスの涙』や『燃ゆる女の肖像』など、ほぼ無音の映画を連続して堪能した対岸で、テレンス・マリックの音楽で満ちた映画に接する。

 

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2017年にアメリカで公開されながら、日本で公開されるまで3年かかったテレンス・マリックの秀作『ソング・トゥ・ソング』を渋谷で鑑賞。
 

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今年『名もなき生涯』というポピュリズムを象徴するような傑作を生み出したマリックの思想は、おそらく我々が目の前にするものとは全く違うかもしれない。マスメディアから遠く離れた位置から次々と傑作を生み出すパワーは、かつてのスタンリー・キューブリックにも似る。その先見性と時代を深堀りする勇気、そして美しい究極の映像に圧倒される。『名もなき生涯』でも目の当たりにしあマジックアワーを捉える映像はこの『ソング・トゥ・ソング』でも採用されていて美しい。
 

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物語は簡単だが、語り口が難解でわかりにくい。しかしこの映画は必ずしも物語を追う映画ではないのだ。そこに示される実在の映像。その美しい映像と人物が戯れる姿を淡々と受け入れるほかないのである。
 

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音楽業界が自惚れて堕落した姿と平行して、ぞれぞれの人物が交差する関係の裏側にあるキャリアなどが少しずつ後半に示される。そしてそれぞれが目指そうとしたアメリカンドリームを手の届きそうなところで、それぞれの家族や家庭の事情で失ってゆくという破綻の物語だ。
 

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このこと自体に意味はないかもしれないが、ドラマはこれらの物語を象徴的に語るのみで、あとは細かいカットに美しい風景がモンタージュされる。そしてタイトルにあるように音楽が次から次へと繋がれてゆく。まさにソング・トゥ・ソングだ。
 

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テレンス・マリックらしく見る側の意思や感情を全く無視した映画の作りは、苦痛だけが連なる作品に思える。しかしマリックの頭はおそらく全く違う方向に向いていると思う。長い沈黙を破って復活した戦争映画『シン・レッド・ライン』と世界中で大絶賛された『ツリー・オブ・ライフ』でほとんど彼のアメリカという国に対する意思は示された。その後の哲学的な一連の作品などは、彼の頭の中にあるイメージの具現化であった。そしていよいよ彼はこの『ソング・トゥ・ソング』と『名もなき生涯』で、世界がどんどん分断してゆくことを示そうとしているように思う。
 

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そして分断はアメリカという国で粛々と膨張していることをこの映画は如実に示す。音楽業界の大物に近づこうとしても結局、地元に帰らざるを得ない敗北したミュージシャン志望の人物たちは格差の象徴、中流階級のジレンマの代表のようだ。そして金持ちの男は何もしなくても金持ちだ。しかし彼も孤独。

ほら、わかるだろう。全ては分断してゆくのだ。
(=^・^=)
 

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