隔たる世界の2人 Two Distant Strangers
Two Distant Strangers 隔たる世界の
2人 32分
アカデミー賞の短編部門でノミネートされている。キーワードはジョージ・フロイドだ。すごいのは、このフロイド事件が起きた昨年5月のあと、2ヶ月で企画があがり4ヶ月後の9月に5日間で撮影したというから驚く。短編とはいえ、映像や音、音楽など工夫が施されていて美しい。
要するにタイムリープものである。
『時をかける少女』や『アバウト・タイム 愛おしい時間について』とここは大きく変わらないのだが、『See You Yesterday』がしっくりくる。主人公の少女の兄が何度も何度も警察に殺される。なんとか兄を救おうとボーイフレンドとともにタイムリープを繰り返すという話。それに『デトロイト』を混ぜ合わせたような話。
主人公の黒人男性は一夜を過ごした女性の部屋から朝、自宅の犬(黒いブル)の世話をするために帰る。アパートを出ると入ってくる白人男性、歩道を通り過ぎる白人女性、目の前にいる売店の女性はラティーノか。そこで白人景観から職務質問を受け、反抗的な態度をとったといいがかりを受けて首を締め付けられて死ぬ。
すると目が覚めて・・・
と何度も同じ朝を繰り返し、ついに彼は勇気をもってその警察官に自ら近づき自宅までパトカーで送ってもらう。このパトカーの中の会話は哲学的で現実的だ。黒人は生まれたときから不利だ、というような話をしつつ、この恐ろしい警官と親しくなる。
ここで映画の中に何度もジョージ・フロイドの文字が現れては消える。家の前でパトカーを降りて2人は握手をして別れる・・・が、それでもまだ終わらない、という展開。フェリーニの『アマルコルド』や『エヴァンゲリオン』のTVシリーズのラストのようなオチがここで待ち受けている。すごい展開だ。短い映画なのによくこれだけのクオリティで映画が撮れたものだと感心するのだが、内容もまたとてつもなく面白い。しかしこの際内容などはどうでもいいと思わせる。この映画が出来上がるまでに何が起きたのか?という背景は、アメリカの歴史が大きな端境期にあることを示すのだ。
もしかすると、アメリカという国が分断するのをコロナという疫病が阻止したのかもしれない。そんなことまで思わせる素晴らしい映画。映画は黒人への偏見だけでなく、格差社会なども匂わせる。それはブルース・ホーンスビーのこの曲に秘められてたりする。
They say he little boy you can't go
Where the others go
'Cause you don't look like they do
Said hey old man how can you stand
To think that way
Did you really think about it
Before you made the rules
He said, SonThat's just the way it is
Some things will never change
That's just the way it is
But don't you believe themBruce Hornsby & The Range " The Way It Is""
もうこの辺からブログを書いていても涙がこぼれそうだ。どうにもならないのさ、という言葉のあとにルールという言葉が重なる。前大統領の言葉にlaw and order"というテレビドラマのような言葉がよく踊っていたが、まさにこれらをぶち壊すようなインスピレーション。
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ミネソタで有罪判決が出たらしい。この映画で苦しみを分かち合えることができるだろうか。https://t.co/H2MldV9rOZ
— dalichoko (@chokobo88428241) April 21, 2021
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