dalichoko

しょうもない

サイダーのように言葉が湧き上がる

先日、日経の「春秋」に凋落する日本の残された数少ない世界に誇れるものとしてアニメのことが紹介されていた。(気になる方はこちらをクリック。)ここに書かれているような甘っちょろいアニメ業界ではないことは誰もが知るところだが、この映画はいろいろな意味で、敢えて時代を逆行するような面が感じられて挑戦的だと思った。素晴らしかった。

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前歯が自分で気に入らない女子スマイルと、雑音から耳をふさぐためヘッドホンをいつも耳にしている男子チェリーが、偶然ショッピングモールで出会うシーンは、まるで大林宣彦監督の『転校生』のようで、お互いがスマホを間違えて持ち帰る。いずれも地方都市のある程度恵まれた家族に支えられてのんびり生きているのだが、いずれもなにかが欠けていて、それを隠そうとしている。ある意味で匿名性の中にいる二人だ。スマイルは動画配信、チェリーは俳句で代弁しようとしている。

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母親が腰を痛めた代わりにチェリーがバイトするショッピングモールの高齢者施設もまた何か欠けた部分がある。その中で、迷子になったようなレコード店を営む藤山という老人がなくしたレコードをこの若い二人が探そうとするドラマだ。あとはくどい説明などは不要。映画を見ればすべてがわかる。とてもドライブ感のあるテンポのいい映画だ。

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細田守監督の『竜とそばかすの姫』にも重なる匿名性。そしてお互いが見えない聞こえないという欠落部分をネットの中で表現しようとする社会。その裏にはそれぞれの孤独がある。そして老人の孤独。この老人がなぜなくしたレコードを探すのか?まるで探偵小説のようなリズム感で進むドラマに、若い二人の隠された思いが交錯して、最後の最後に素晴らしい展開が待っている。

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レコードが昭和の産物だとすると、この映画を製作した「フライング・ドッグ」という会社は、いわゆる前身がビクターで、昭和を代表するレコード会社だったことがこの映画が生み出された背景いはあるのだろう。このレコードをめぐるエピソードの最後に、昭和の時代を疾走したあの大物シンガーの声が聞こえてくる。この声を耳にした途端、我々昭和生まれはとてつもない感動に胸が締め付けられるのだ。

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とても若々しい映画だが、ドラマそのものは時代を大きく包み込む壮大な展開になってゆく。登場人物と背景に、地方都市に広がる都市化とか孤独なども見え隠れして、社会性の高いテーマもやんわりと盛り込んでいる。実に爽やかで美しい映画。デジタル化全盛のアニメ界を逆さまにしたような映画に感動した。
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