経済で読み解く日本史 「室町・戦国時代」
歴史を経済で読み解くってなかなか面白いですよね。上念司さんの著書を初めて読ませていただきましたが、目からウロコでした。とても面白かった。
本書は、歴史を読むというだけでなく、どの時代でも経済政策に生まれるある傾向などを現代に照らして、いわゆる「歴史は繰り返す」ということを立証しようとしています。
序文に大きなテーマというか前提条件が書かれていて「景気が悪くなると過激思想に染まっていく」という一文に、ファシズムやナチス、いまの日本の状況などが重なります。いま日本は戦前の大本営状態だということを頭に入れると、歴史が読み解けてくるような気がしますね。
最も衝撃的で教科書などでも教わらないことは、宗教がなぜ今日に至るまで力を維持しているのか?という原点となることが整理されているんですね。当時の明(今の中国)へ僧侶が命がけで留学に行った理由は”銅線”だったということです。宗教ではなく”マネー”を獲得するために天台宗をリードする比叡山から大勢の僧侶が明に向かい銅線を手に入れて帰ってくる。これが今に至る宗教と政治のメカニズムとも言えます。
そして金のある宗派が政治を影で操る。室町幕府もまた同じで、その様はまるで巨大マフィアのようだったのではないかと上念さんは書いています。
すると今度は、宗教を軸に覇権争奪戦になる。
政権交代が進む過程で、政治とスポンサーである宗派との関係と、それを打倒しようとする新勢力との戦いは、すべて”経済”が背景にあることを教えてくれます。
その後本願寺で生まれた浄土真宗が新勢力としてときの政治と結びつくなど、金の動きが政治の動きに連動する。そのときに影響するのが天候や災害だったりするのもまた現代に意味をもたらしましね。安定した政治も、何かをきっかけに凋落してゆくことがある、ということです。
ここで五山と比叡山という対立の話題になりますが、これ京都と滋賀のバトルですよね。こういう歴史を知ってから観光するとまた楽しいかもしれません。余談ですが。
最後に、なぜ織田信長が宗教を嫌ったのか?という話に結びます。それは宗教が事実上マフィアのように政治と関わって、皆来政治のように支配を及ぼそうとする。
ここで現代のマフィアは誰か?と考えます。暴対法の波及で、それは「仁義なき戦い」のようなヤクザではなく、電通ですよ。電通が現代のマフィア。報道を支配し政治を支える仕組みは、戦争へと進んだ大本営の時代と同じなんですね。
宗教=マフィア、そしてマフィアと政治の同一性。
政治家はつまりいつの時代も力でねじ伏せようとするマフィアのようなものなんですよ。
そんなことを認識させてくれる名著でした。
但し、この本の作者の先生は、かなり偏りのある考えの方なので、分析力とご本人の主張(意見等)については分けて読み取る必要があるでしょうね。かなり右寄りの過激思想です。
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