Netflixドラマ『ハリウッド』
7話からなるハリウッド黎明期のドラマ。かなりリアルでありながら、これはフィクションのようだ。フィクションであるというリアリティ。そして映画の根底に潜む様々な歴史に影に押しつぶされた事実を掘り起こしている。素晴らしい作品だった。
戦争帰りの兵隊服に身をまとうジャック・コステロは妻と銀行に行くが金を貸してくれない。妻はカフェで働き、自分は映画スターを夢見るが、職がないのでガソリン・スタンドに面接に行く。イケメンのジャックはすぐ採用になるが、仕事はハリウッドの金持ちを「夢の国」に連れてゆく仕事。淑女をホテルで夢の世界へ誘う仕事。妻の手前、この仕事に後ろめたさを感じながらも、収入は増えてゆく。
あとはドラマを見ていただくほかないが、1945年、つまり戦後のハリウッドで夢を追う人々と、その夢を実現させようとする映画会社の人々に、黒人やゲイなどの偏見が大いに絡み合い、話は複雑化してゆくのである。見事なシナリオ。
フィクションでありながら、ロック・ハドソンやヴィヴィアン・リー、ジョージ・キューカーなど実在の人物が描かれ、最後のクライマックス、第20回アカデミー賞授賞式はそのままで、実際の受賞作品とドラマの結末は異なる。エリア・カザンの『紳士協定』が受賞した年。
『スキャンダル』という映画で放送業界のセクハラが暴露されたわけだが、映画界のワインスタインの悪業もまた爆慮されてゆくだろう。しかしそのもっと大昔に、差別や偏見や暴力についての圧力があったことをこの映画では明示する。KKK団から圧力などもあったりする。
オープニングタイトルでハリウッドの山にある大きな文字に上ろうとする若者たち。落ちそうになる仲間を手に取って救おうとするシーンが、ドラマの進行を深く暗示している。あれはまぼろしか?現実か?映画関係者も映画ファンも、このドラマを見れば語りつくすことができないほど面白い展開だったことだろう。