ダムネーション/天罰 タル・ベーラ
『ダムネーション/天罰』を雪の降る表参道イメージフォーラムで鑑賞。
手に負えなかった。
これをどう説明していいかわからない。わからないのでめったに買わないプログラムを買ったが、それでもよくわからない。
少なからず、この映画は物語を追う映画ではない。そこにあるのは至高の芸術。冒頭のシーン、ケーブルカーのある風景からカメラが引いて、人物の背中を映す。その間、ケーブルカーが回る音と不思議な重低音が迫ってくる。人物は後ろ姿のままタバコを吸う。ここまで何分かかったかわからないが、とにかくたったこれだけのシーンをワンカットで仕上げている。
こうした映像と、人物の表情やハイトーンのモノクロ映像、そのコントラストがあらゆる被写体に存在感を与える。家の外壁をも芸術に代える。壁に滴る雨もまた同じ。時々亡霊のように現れる野良犬の演技も見事だ。主人公は狂気に苛まれ絶体絶命の状態になる。ある人物から運び屋を任されるが、その男の妻のことを愛している。この三角関係もドラマの意味としては存在しない。
意味ありげななにかを呼び起こしてはそれを裏切るような展開と、これまで見たこともないような美しい映像が2時間ゆっくりとゆっくりと流れてゆく。時間の芸術といわれる映画の最も豪華で裕福な時間を、貧しく苦しみあい被写体をとおして、人の愚かさを示す映画だと勝手に認識する。しかしこうした稚拙な認識すらも否定されてしまいそうな、強烈な切れ味をもった映像である。
ある種の敗北感に押しつぶされてしまう、
さぁ、次は『サタンタンゴ』だ。438分の映画体験に挑戦する。
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貼りました。みつけてみてくださいね。