つまらなかった。というかノーランとは相性がよくないのだと思う。
この映画に200億円が投じられ、その三倍の興行収入がないとペイできなという途方も無い現実を聞かされても全く実感がない。
ノーランの作品をすべて見たわけではないのだが、彼の作品のいったい何が面白いといえるのだろうか?なにが面白いんですか?
私にはまるでその面白さがわからないんです。
ひとつだけ傾向を並べると、主人公がドラマの最初で力を持たないということ。あのブルース・ウェインですら『バットマン・ビギンズ』では子供で力がない。『ダークナイト』はジョーカーの話だったが、ここでバットマンは脇役で力を持たない。『インター・ステラー』の元宇宙飛行士という設定で、このドラマの始まりでは力を持たないファーマーだ。そして『ダンケルク』こそまさに力のない名もなき兵士の記録に残らない話だ。
そしてこの映画である。『TENET テネット』
この主人公は名もない黒人男性だ。最初から劇場のアクションシーンで圧倒し、この名もなき黒人男性が背負ったミッションは時空を超えて戦争を阻止するという壮大な物語。しかしこの名もなき男も最初力を持たない。
最後に10分の順行と10分の逆行が交錯するややこしいアクションシーンをクライマックスにしているが、この10分というのは『メメント』の記憶時間と重なる。そして本作の映画タイトルもまた、このシーンを言っている。
こう書くといかにも面白そうだが、その先に何があるというだ?これらのドラマにいったい何の意味があるのか?どんな時代性がありどんな未来を想像しているのか?
『TENET テネット』では(ネタバレになるが)結局戦った相手がすべて自分なのだ。世界を滅ぼそうとするロシアの富豪。そしてこの富豪が浮気していると思っていた女性もまた、この妻自身だった。そして主人公が飛行場で格闘する相手も自分で、最後これらを仕掛けた黒幕も自分だった、という語り口は『地獄の黙示録』的ではある。
しかしどうも自己を否定するような話でもなさそうだし、いったいこの映画が何を言わんとするのかがわからない。言いたいことがよくわからない、あるいは感じさせないと、映像がどんなに素晴らしくても面白くもなんともない。
映画館で見て疲れて終わる。そんな一日であった。
つまらなかった。
(=^・^=)