dalichoko

しょうもない

薄氷 Bajocero

例年だと年末年始はDVDをごっそり借りてきて見過ごした映画や懐かしい映画を終日見たり、映画館に行って一日3本とか映画鑑賞する日々なのだが、コロナの影響もあってかトレンドが変わってきた。まずレンタルしなくなって、かわりにNetflix鑑賞することが多い。多いというかもうしばらく家の前のレンタルショップに行ったことがない。(レンタルショップのラインナップも弱いのだが・・・)

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ということで今日は朝からこの映画『薄氷』というスペインのサスペンス映画を鑑賞。スペイン語の原題は”Bajocero”。氷点下という意味だろうか。とにかく寒い。凍えそうな寒さの中ドラマは展開する。護送車という密室の中で起こる人間ドラマとも言える。密室状態映画だと、『ダイハード』や『スピード』、あるいは『新感染 ファイナル・エクスプレス』が連想されるが、犯罪者を運ぶ護送車が舞台となる映画ってあったろうか。ある意味新鮮だ。

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護送車を運転する警察官が主役なのだが、オープニングは泥だらけの雨の中の暴行シーンで始まる。この意味は後半にならないとまるでわからない。直後にこの警察官の可愛らしい娘が出てきたりしてこれもまた暗示的だ。護送が始まり緊張が走るなか、途中で護送車を先導するパトカーが霧の中で消えるなどのシーンが積み重ねられ、護送車の中はとんでもない事態となってくる。

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密室劇の面白さは人物の背景が次第に見えてくるところだろう。この変化。ときに立場が変化してゆく過程を覗くのがとてつもなく面白い。『12人の怒れる男』もそうだった。護送する側と運ばれる側との対立の中で様々な人間模様が描かれる。

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ここに第三者が現れる。護送車を狙う外部からの攻撃。当然内部は大パニックになる。護送車がパンクし、外から突然銃撃される。そしてガソリンをまかれ、死者がでるほどの大騒ぎになってゆく。最初は対立していた警察と犯罪者が外部からの敵と対峙するはめになる。日本語のタイトル『薄氷』は最後の重要なポイントとなって出てくるのだが、これもまた衝撃的だ。『タイタニック』のあのシーンを思わせる息詰まる展開。

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ドラマそのものも面白いし、展開が次々と変化して実に面白い映画だ。

しかし、ことはどうもそう簡単ではなさそうだ。この最後の銃撃戦で語られる動機がやや唐突な気がして調べたら、どうもスペイン国内で大きな暴動になったある裁判の判決がこの映画が作られるきっかけになったようだ。”集団強姦は無罪”という判決にスペイン全土で猛抗議運動が広がったことがこの映画のベースにはある。

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単純にアクションサスペンスとして楽しめる映画ではあるが、どうやらスペインという国内事情、ひいてはラティーノの世界に蔓延する情熱が暴力へと変化してゆくジレンマをこの映画で示そうとしているフシがある。意味深で意義深い映画だ。弱者とその家族がどこかで悲しい思いをしている。日本にだって同じようなことがあるだろう。上級国民の交通事故だって、この映画と同じことを示しているとはいえないだろうか。

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