ミスター・ロジャースのご近所さんになろう WON'T YOU BE MY NEIGHBOR?
フレッド・ロジャースというアメリカの子供向け番組を30年以上も続けた方のドキュメンタリー。
これはトム・ハンクスがロジャースさんを演じた『幸せへのまわり道』がこのドキュメンタリー映画の翌年に公開となり、ささやかなロジャースさんブームとなった。トム・ハンクスがじつにうまくロジャースさんを演じていた。ニューヨークの地下鉄で、ロジャースさんに気がついた乗客がA BEAUTIFUL DAY IN THE NEIGHBORHOOD”を合唱するシーンに強く感動した。そこには年代と人種を超えた絆があった。
この映画は、生前のロジャースさんへのインタビューと、関係者の証言で時系列に綴られてゆく。ロジャースさんがテレビに着目したことと、騒々しいテレビ番組が多い中で沈黙を豊かに表現しゆっくりとゆっくりと言葉をつなぐ彼の姿勢に心を打たれる。存在そのものが神がかり的である。
マペットを使った手法もまた効果的だ。世の中の事件や戦争、あるいはいじめや”死”というテーマをごまかさず、正面から伝える。暗殺事件やテロ事件があっても、子供向け番組でこうした時事問題を取り上げるのだ。ロジャースさんの姿勢で最も輝かしい点はここだろう。事実から目をそらさない。ゲストが来て聞き手として対峙するとき、彼は必ず相手の目を見つめる。
いまでいうLGBTや黒人差別問題などに対しても真っ向から取り組む。当時、黒人がプールの入ることは禁じられていた時代に、同じ樽の中に足をいれるシーンは感動を呼ぶ。しかし彼は淡々と当たり前のようにこうしたシーンを子供向け番組の中心に据えるのである。
公共放送としての役割に対し政治的圧力がかけられたとき、当時ニクソン大統領時代に公聴会に呼ばれて彼は特別な言葉に頼らず、番組のテーマ曲の歌詞を朗読し、審議官を感動に導く。予算削減をする公聴会で、番組のメロディーが人々を納得させた。
ほかにも数え切れないほどのエピソードをロジャースさんとこれらの番組は築き上げてきたのだが、障害になって車椅子で番組に現れた少年が大人になって、何かの表彰式でロジャースさんと再会するラストはあまりにも感動的だ。何もしなくても誰もが特別なでかけがえのない子供なんだ、ということをしきりに繰り返すことで慈愛を放っている。
しかし残念なことに、こうした彼の長年の功績を茶化したり批判したりする者たちがいる。ある種の有名税のようなものだろうか。しかし彼はそうした悪意に対しても武器を持たない。力で対抗することなく冷静に柔らかく応じる彼の姿勢に学ぶことは多い。アメリカはいま憎しみの連鎖が広まっている。いや世界にその憎しみと悲しみが連鎖しているようだ。そうした社会にならないためには、幼児教育から考え直さないといけない。ロジャースさんの多くのセリフで最も印象的なのは「彼ら(幼い子どもたち)もいつか消費者になる。」ということ。それは大人になって彼らが武器や暴力に使うものに消費することがないようにしたいという願いが込められていると感じた。
ロジャースさんの功績は当たり前として、これは映画としても充実した内容だ。そして目をそむけてはいけない社会が目の前の存在する。
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