ボストン市庁舎
事実だけを伝える4時間半。何も演出がない。それがこの『ボストン市庁舎』だった。
これだけ長い映画なので一般的には興行に乗りにくく、すぐ打ち切りになってしまうので、公開一週間後の土曜日に滑り込んだのだが、ヒューマントラストシネマ有楽町のスクリーン1は8割以上の入りだったように思う。途中の休憩をはさんで273分は全く長さを感じさせない。
この映画の背景に、2014年にマーティン・ウオルシュ氏が市長に選ばれた後、アメリカの大統領がドナルド・トランプになったことがある。まさかという事態だった。世界の仕組みが大きく変わる瞬間だった。あれが2016年。
多くのシーンが感動的で涙なくして語れないのだが、ウオルシュ氏がアイルランド難民で彼の祖先もまたマイノリティだったことを丁寧に告白する。そしてボストンのカラーズたちに繰り返し繰り返しメッセージを送る。ウオルシュ氏の話を聞く側は静かに彼の話を受け入れウオルシュ氏に拍手を送り返す。この繰り返しが映画で伝えられる。そしてウオルシュ氏自身も子供の頃病弱で生死をさまよったこと
世の中、当時のアメリカ合衆国を始めに、世界が排他的でポピュリズムに傾斜する世の中で、ボストン市の市長をトップとするガバナーは徹底して市民を救う。映画の冒頭のシーンが次々にかかる電話の内容を紹介する。途中で家にねずみが出たという問い合わせに市の職員が現場にかけつけ、家主への交渉も含めて対応する。こんなこと日本では絶対あり得ない。
合間に移されるボストンの風景もまた印象的だ。静かで整然としたように見える風景の中で、様々な対立がある。それをウオルシュ氏はどんどん解決してゆく。彼は浮ついたジョークではなく、徹底して現実的なメッセージを伝える。もともと労働運動の専門家であるウオルシュ氏はその後バイデン政権の労働長官に抜擢され、その後に選任された新しい市長がアジア系の若い女性ミシェル・ウーが選ばれたこともドラマの続編として感度的だ。
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貼りました。みつけてみてくださいね。