逆境の資本主義 変質する暮らし 民主主義の試練
第2節では「変質する暮らし」を分析する。
AIなどの普及により労働時間は短縮される。これを受けて労働は
・働かなくてもよくなるか
・働けなくなるか
に二極化するという。大内伸哉教授(神戸大)は雇用を「時間主義」で示す。企業に時間を捧げるのが雇用だという。そして定年制はもはや時代遅れであって、ノウハウで働く時代になるだろうという。働き手の賞味期限が伸びるということのようで、これが行き着くところでは「会社員は消え、労働法もなくなる」という大胆な主張だ。
会社組織ではなく広く個人の集合体が労働の主軸となるということか。
これを第4次産業革命と位置づけ、労働が「機械を使う側」の仕事しか残らないのではないかと予想する。つまり機械やロボットを使う側に資本が集中し、あとは配分をどうするか?という問題に行き着くというのだ。
反対に消費はますます縮小してゆく。ヴェブレンが『有閑階級の理論』で、消費の原動力は見栄と欲望だと言ったが、ミニマリストの台頭はそうした欲望を自ら縮小してゆくデフレ基調に入り、貯蓄の行き場を塞いでゆく。松原隆一郎教授曰く「貯蓄主体の社会は資本主義ではない。」と。まさに資本主義は消費と雇用の間で中間層を失い、制度そのものが脅かされている。資本主義=民主主義というデマ。もはや資本主義は”自由”という偽の看板を背負った矛盾だらけの独裁体制なのだ。
3 自由、民主主義の試練
中国の覇権が果たして民主主義を揺るがすものかどうか、という点について見極める必要がある。ドル側は認めたがらないが、明らかにデジタル人民元はすでに世界を覆っている。岩井克人教授がケインズが唱えたバンコールを現代に置き換えて「デジタル・バンコール」を検討してはどうか?という。いずれにせよドルが崩壊することは明らかで、崩壊後にブロック化すれば戦争になり、うまくグローバル化すればバンコールを検討せざるを得なくなるだろうともいう。その意味でフェイスブックの「リブラ」は注目に値するとも言っている。
どちらにしても一旦は保護主義が台頭し、大きな世界恐慌になることは間違いない。もしその時がきたときに、それぞれの国が民主主義をどのように捉えるかが課題となる。資本主義がこのまま行き過ぎれば格差は広がり、民主主義のゆらぎはポピュリズムを誘引する。佐伯啓思教授は「限られたパイの奪い合いは新帝国主義へ向かう」と断言する。またアルン・スンドララジャン氏は「民主主義と資本主義は必ずしも共存しなくてもいい」とも言う。
そのとおりだろう。
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