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しょうもない

ラスト・ナイト・イン・ソーホー

ラスト・ナイト・イン・ソーホーエドガー・ライト監督の新作。彼の映画だと『スコット・ピルグリム VS.邪悪な元カレ軍団』というおバカ映画がすごい。いや、あれはおバカ映画ではない。4ビットの任天堂ゲームをステージとする陳腐な映画に思わせて、実は『地獄の黙示録』なども意識させるすごいエンディングが待ち受ける哲学的な映画だった。そしてこの日見た、『ラスト・ナイト・イン・ソーホー』もまた、あのおバカ映画で言わんとしたことが重なっている。


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 ホラー映画なのだが、青春ドラマだ。しかしひとことでこの映画を片付けるのは難しい。1960年代のソーホーに遡及することの意味などを考えると、エドガー・ライト監督の言わんとすることがほのかに伝わってくる。

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デザイナーになること夢見る主人公のエロイーズ。彼女は新聞紙で作ったドレスで踊る。そのとき部屋には『ティファニーで朝食を』のポスターが飾られている。ヘプバーン演じるホリーもまた都会で翻弄される女性。そして彼女の孤独、飼い猫を雨の中抱きしめるホリーの心理は、この映画のエロイーズにぴたりと重なる。ここからすでにエドガー・ライト監督の仕掛けは始まってる。 ファッション学校に合格して都会(ソーホー)に出てきたエロイーズは、同僚に馴染めず没個性の自分にジレンマを感じて寮を出る。そして借りたアパートで起こるドラマが恐ろしい。

 


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メイキングを見ると、二人の女性がダンス中に入れ替わる不思議なシーンが、どのように撮影されているかわかって面白い。これは必見だ。
エロイーズには見えるものがある。他人には見えないもの、それがこのドラマの軸となる。個性のない現在の自分に鏡越しに現れるサンディ。ブロンドの魅力的なサンディに自らを重ねることで、次第に才能を開花させてゆく。しかし鏡の向こうにいる1960年代に生きるサンディは、自らの才能や個性が、男性社会の性的な道具として消化されてゆき、生活がどんどん荒んでゆく。
そしてサンディの苦しみが最後に驚くべきエンディングへと向かう。衝撃のエンディング。サンディの存在がまさかの人物に覆われていることが明らかとなる。
サンディが多くの男性に名前を聞かれて、それぞれに違う名前や愛称で応じるシーンが印象的だ。彼女は道具でしかないのだ。そして彼女もそれを自覚する。そんなサンディを鏡越しにしか見ることができないエロイーズの恐怖。エロイーズにもまた現実に虐げられた自分が重なり、恐怖にさいなまれてゆく。
これは50年前を舞台とした映画でありながら、現代の現実に突きつけるものだ。まだまだ社会は女性に厳しい。日本は特にそうだ。女性を蔑視する男性の中にある抗えない心理もまたこの映画のテーマだろう。
サスペンスホラーとして楽しめる映画、エドガー・ライト監督は単にそれだけで終わらせない意識をこの映画に散りばめている。素晴らしい映画だった。感動した。
(=^・^=)
 
 

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