嵐の中で オリオル・パウロ
なかなか複雑な構造の映画だ。スペイン映画の『嵐の中で』Netflix映画。
英語タイトルのMIRAGEは蜃気楼。
1989年のある日、ビデオを撮りながら演奏するニコ少年が隣家の騒ぎを聞いて表に出る。このシーンがいきなり衝撃的だ。そして時代は変わって現代。ある幸せな家庭の女性が小さな娘とベッドで過ごしている。この2つの時代が並行して描かれる。そしてこの2つの時代と二人の人物が嵐の中で不思議な現象で交差する、という話し。
サスペンスとラブストーリーを織り交ぜ、巧妙に描かれたディテールがすごい。
詳細はこちらのブログがおすすめするが、とにかく細かい伏線がうまく最後に結びついていて驚く。
そして気になるのはその時代性だ。1989年11月9日から始まる物語は、翌日に崩壊するベルリンの壁、ドイツを分断していた壁が崩壊する前日に大きな嵐が吹き荒れる、という設定だ。この嵐はまさに当時の世相そのものだ。そしてそれを現代に投げかけるところに何らかの意味があるのではないかと感じさせる。同年6月に起きた天安門事件とともに歴史の節目となるこの時代をいまあらためて考える。
そしていま、そのパンデミックで我々は喉元にナイフを突きつけられている。地球を守るための感染症と、地球をクラッシュさせる仕組みの資本主義がまさにいま衝突しているのである。この映画は、映画の中では全く語られないが、そうした社会変化を示そうとしているように感じる。
しかしドラマは後半に向けて想像もできない壮大なラブストーリーに展開してゆく。時代を超えた愛。タイムリープする二人の愛が、最後の命がけて結ばれようとするラストは衝撃だ。
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貼りました。みつけてみてくださいね。