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しょうもない

アラン・ドロン

ブロトピ:映画ブログ更新

 

徒然なる記事になるが、最近またフランス映画にはまっていて、特にアラン・ドロンをめぐる作品に縁が続いている。

 

結論を先んじて書くと、「映画は見る側の年齢の変化で価値が変わる。」ということ。代表例は寅さんだ。子供のころ確かに親や親せきに連れられて正月の楽天地で見た寅さんは面白かった。しかし今見ると面白さに味わいを感じるのである。

さて本題に戻るが、フランス映画の魅力はなんといってもセンスだ。スクリーンを覆うセンス。その中にあのアラン・ドロンが出てくると、それだけで映画の価値が上がる。

最近はあまり取り上げられないが、アラン・ドロンというと当時大スターで、日本にも縁が深かった。テレビCMなどでもよく見かけたものだ。

 

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彼のデビューはその美貌に由来するようで、Wikipediaを読むとある女優から「カンヌ映画祭のときに歩けば声をかけられるわよ。」と言われてその通りにしたら、ロック・ハドソンを発掘したハリウッドのエージェントに声をかけられたそうだ。この人物はNetflixドラマ『ハリウッド』にもその個性的な人物が登場するのだが、確かにあのルックスが歩いていたら声をかけられるであろうと想像させる。

 

その後いくつかの作品を経て、『禁じられた遊び』のルネ・クレマンに見いだされて『太陽がいっぱい』で大人気となる。1960年のことだ。この映画のアラン・ドロンは屈託がない。”貧しい青年”という人物設定だが、そんな卑屈な感じがしない。むしろ金持ちのフィリップ(モーリス・ロネ)よりも品があるように感じさせる。

 

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実はこの映画の8年後に、彼はモーリス・ロネと『太陽が知っている』という映画で共演している。ここでは二人とも金持ちの役ではあるがそれぞれの立場を微妙に変えて演じていて面白い。これはルカ・グァダニーノ監督がリメイクした『胸騒ぎのシチリア』という映画に波及した作品。監督はジャック・ドレーで、アラン・ドロンを主役にしたヒット作を連発した。脚本のジャン=クロード・カリエールは現在も活躍する大脚本家で、『ブリキの太鼓』や『存在の耐えられない軽さ』、大島渚監督の『マックス・モン・アムール』にも協力している。音楽はあの『シェルブールの雨傘』などで有名なミシェル・ルグラン

 

『胸騒ぎのシチリア』もまた見ごたえ十分だ。『太陽が知っている』でジェーン・バーキンが演じた少女をダコタ・ジョンソンが演じている。彼女はヒッチコックの『』でデビューしたティッピ・ヘドレンの孫だ。

 

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『太陽が知っている』にはアラン・ドロンと恋愛関係にあったロミー・シュナイダーが出ていて素晴らしい演技を見せつける。このエロス極まりない映画でアラン・ドロンとロミーは本物の恋人同士を激しく演じているが、実は『太陽がいっぱい』にもロミーがカメオ出演しているシーンがあったのだ。彼女のことを詳しく知らなかったが、43歳の若さで亡くなった大女優も、かなり浮き沈みのある人生を送っていたようだ。ドイツ人で大スターだった彼女はアラン・ドロンとの出会いがきっかけでフランスに渡るが、ドイツからはその後軽蔑されていたらしい。晩年は子供を亡くし、自らも病に陥りながら『サン・スーシの女』で命がけの演技を残し、これが彼女の遺作となる。個人的にはロベール・アンリコ監督作品でフィルップ・ノワレと共演した『追想』を覚えている。この映画を映画館で鑑賞した。ドイツのスターがドイツを離れ、フランス人に支持されながら、ドイツ人から軽蔑されて死んでゆくというすさまじい国籍を超えた女優のドラマは、先ごろレネー・デルヴィガーがアカデミー賞を受賞した『ジュディ』にもまさる壮絶な人生ではなかろうか。(いつかドラマ化してほしい。)若くして亡くなった女優だとマリリン・モンローが連想されるが、波乱万丈な生きざまはロミーにおいても劣らない。(フランスとドイツの気質の違いにはさまれたのか?)

 

ジェーン・バーキンのことも書いておく。『太陽が知っている』のジェーン・バーキンは未成年の少女役で、大人のアラン・ドロンと次第に恋に堕ちてゆく細身の美しい少女を演じているが、最近の写真を見ると別人のように太ってしまって面影はまるでない。知らなかったが、なんと彼女はあのシャルロット・ゲインズブールのお母さんだったのね。ミュージシャンで女優というのも親譲りだが、エロチックな姿勢(『ニンフォマニアック』など)も血のつながりか。最初の夫がジョン・バリー。言うまでもなく♪デンデケデーン、デンデンデン、デンデケデーン、デンデンデン♪であまりにも有名な007ジェームズ・ボンドのテーマを世に放った男。そしてジェーン・バーキンの現在の伴侶のジャック・ドワイヨン。『ポネット』が今度リバイバル上映するらしい。血のつながらない娘シャルロット・ゲインズブールの映画も撮ったりしている。

 

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アラン・ドロンを日本で印象づける代名詞は”太陽”だろう。この2作品『太陽がいっぱい』と『太陽が知っている』に加えて、ミケランジェロ・アントニオーニ監督の『太陽はひとりぼっち』という映画にも出ている。これはとてつもない傑作である。イタリアの証券取引所のシーンなど、時代性を表現した見事な作品。

 

ちなみにクロード・ルルーシュの『男と女』も再度鑑賞した。素晴らしい映画だったが、これ、10代の自分ではまるで理解できなかったと思う。アヌーク・エーメがどれほど美しく感じるか?という感覚はいまでこそ思えることだ。ジャン=ルイ・トランティニャンの演技も見どころ満載だ。彼はアラン・ドロンと『フリック・ストーリー』で共演している。ベルドルッチハネケの作品にも出ている名優だ。ルルーシュの『男と女 人生最良の日々』で53年ぶりに男女を再会させるという荒業を使っている。これもまた年を重ねてみるべき映画だろう。

 

これらの映画を当時10代の自分が鑑賞して何を思ったかはまるで記憶がない。あるのは『太陽がいっぱい』でアラン・ドロンが壁に向かってサインの練習をしているシーンぐらいか。ところがこれらを今見ると、なんとなんと宝探しをするがごとき楽しみが散りばめられているのである。経験や知識の変化で映画の見る目は変わるものだ。しかし以前に見た記憶もまたそこには薄っすらと残っていて、このような変化を楽しむのもまた映画のだいご味だと思う。

 

映画はこよなく学びの場だ。まだまだ学ぶ機会は多い。

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