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しょうもない

生き抜くためのドストエフスキー入門 佐藤優 罪と罰・白痴

2021年がドストエフスキー生誕200年ということと、コロナという未曾有の感染症が世界を蔓延する中で、ロシアの文豪が見直されてる。手始めに亀山郁夫先生の著書「ドストエフスキー黒い言葉」に触れてはみたものの、あまりにも敷居が高すぎて苦戦した。もとはといえばブレッソンの『やさしい女』を軽々しく見てしまったことでドストエフスキーのスイッチがONになってしまったのだが、いまもってドストエフスキーの重さに圧迫死してしまいそうだ。それは黒澤明監督が『白痴』の制作過程で背負ったこととことによると似ているかもしれない。(いうまでもなくレベルは雲と地の隔たりがあるが・・・)
そこで同じ頃購入した佐藤優さんのこの入門編をなぞることでそれぞれの意味を学び直そうということにした。というのはウソで、思いつきで買っただけのことだ。
この本は、ドストエフスキーの長編5作品を順に並べて、学校形式で佐藤優さんが講義をされたときの講義録だ。それにしても佐藤優さんの知識量の総量はあまりにも深く広い。その壮大な知識量に圧倒される中でも、元外務官僚でロシアの日本大使館でも活躍された佐藤優さんのドストエフスキー解説は、本場仕込みの内容だ。
 
まずこの本では、コロナ禍の異常なこの環境を「犠牲の累進性」という言葉で抽象化したうえで、ドストエフスキーの人生を振り返ることで200年の時間を重ねてゆく。ドストエフスキーの人生に大きな刺激となった事件がふたつあって、ひとつが父親が農奴の恨みをかって殺されたことと、ドストエフスキー自身がロシア正教会を批判して死刑判決を受けたことだという。このふたつの大きな事件が、彼の作品群の根底にあるようだ。
 
第一章 罪と罰
これは非凡人の大義のために凡人を殺すという老婆殺しの物語だ。自らを非凡人とするラスコーリニコフが娼婦のソーニャへ告白することで物語が進行してゆく。理性と心情が分裂したラスコーリニコフはソーニャの説得で自首をするのだが、シベリアに送られて自らを犠牲にすることで、娼婦のソーニャが勝利するという結末になっている。非凡人と自負するラスコーリニコフと娼婦であるソーニャという、一見隔たりのある二人だが、ソーニャは娼婦であることをまるで卑屈に思っていない。
そしてこの作品から漂うロシア正教の土壌主義に反するような世俗主義ポピュリズム)はファシズムへ誘うもののように映る。ラスコーリニコフが見た疫病の夢はまさにコロナ禍を予言するようなもので、その行き先には社会の分断も重ねられているようだ。
 
第ニ章 白痴
これは前述の通り、黒澤明監督の作品で縁があるので多少は心得がある。印象的なシーンの多いあの作品を原作で読み解こうとする。
このドラマはエゴや虚栄や蔑みが交差する果てに愛を描いた物語だ。
佐藤優さんは主人公のムイシュキンを星飛雄馬だと表現している。存在するだけで周囲を悲惨な状況に陥れてしまう。破局へのプロセスを加速させるような存在。確かに彼の存在に誰もが引き寄せられ不幸な関係に導かれてゆく物語だ。
ドストエフスキーマルクス疎外論を支持し、利己主義が人間を断絶させると主張している。そしてこのドラマに出てくる大金持ちのロゴージンという男に金儲けに卑しいユダヤ人を重ねている。ドストエフスキーユダヤ人嫌いは有名だ。そしてムイシュキンにキリストをロゴージンに卑しい商人を重ねて神への信仰を示す。ロシア正教を是としカトリックをどちらかというと否定的にとらえている。
 
つづく・・・
 
 

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