dalichoko

しょうもない

時給はいつも最低賃金 和田静香著

「時給はいつも最低賃金 これって私のせいですか?」

f:id:chokobostallions:20220106164719j:plain

どこまでが本当のタイトルかわからないが、とにかく長いタイトルの本だ。
実は大島新監督の『香川1区』を鑑賞してたら、『選挙活動、ビラ配りからやってみた。「香川1区」密着日記』というエッセイが同時発売されていて、去る10月の衆議院選挙で和田さん自身が小川純也さんの選挙事務所で働くという体当たり取材をしたときのことが書かれた本を先に読んだことがきっかけだ。先の本はあっという間に読めて、一気読みしてしまったので、勢いでこちらの本を購入したのだが、そう簡単ではなかった。『選挙活動〜』は映画と概ね重なる部分があるが、こちらは小川淳也さんと和田さんのガチ対談で、幅広い話題で食い込んでくる。しかも和田さんはご自身も認める政治の素人。そして小川さんは政策通である。持続可能な社会を作るために、正々堂々と国民に説明する、という内容だ。
途中で小川さんが、ちんぷんかんぷんの和田さんに対する説明で「和田さんに説明するのは国家的課題ですからね。」と何度もかみ砕いて丁寧に説明するやりとりが印象的だ。決して簡単な内容ではないが、広く読まれるべき本だと思う。和田さんのポップな語り口が心地いい。

f:id:chokobostallions:20220106164737j:plain

結論から言うと、和田さんはよくやったと思う。まっさらな状態からここまで小川淳也氏とほかのさまざまな著書からの引用も含め、よくぞ整理できたと思う。特に小川さんの主張は、自分のいまの状況を踏まえてもなかなか得心のゆくものではなく、種々の疑問と不安も感じる内容だ。しかし小川さんの揺るぎない姿勢の源泉はひとつに絞られる。それは「持続可能社会」を長い年月をかけて作り続けることだ。いまは残念ながら、目先の政治、有権者に阿る票集めが目的の政治が大勢を占めているが、小川さんは「見えないように隠す政治はイヤだ!」と断言するほど潔い。
増税、生涯現役、定年廃止、人口減少と環境問題など、全く耳障りのよくないことを現実に照らして説明する。実直に言えば、小川さんの主張はきっと多くの人に受入れを拒否されるものばかりではないだろうか。
しかし・・・
ここで冷静にならなければならないことがいくつかある。
例えばウルグアイのムヒカ。あるいはドラゴン桜。さらには「女王の教室」で語られたあのセリフ。
さらに『人新世の資本論』や『ドーナツ経済』へとつながる壮大なスケールの話へと発展してゆくのだ。
いまいちど学ばなければならないこと、そしてこれまでの常識を改めなければならないことが山ほどここに詰め込まれている。すごい本だった。
(=^・^=)
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

パーフェクト・ケア J・ブレイクソン

パーフェクト・ケア』を角川シネマ有楽町で鑑賞。この映画館は初めてだったと思う。かなり大きなシアターだった。
"I care a lot”がオリジナルタイトルだ。「看病しまくるぜ」みたいなニュアンスか。
ひとことで言うとぶっ飛んだ映画だ。

f:id:chokobostallions:20220106171518j:plain

後見人事業というのがあって、高齢者の財産を立場を利用して自分の利益にするというビジネス。ロザムンド・パイク演じる主人公がとにかくかっこいい。丸いサングラスや原色がまばゆいワンピースを見にまというこの女性は、弁も達者で判事からの信頼も厚い。時々吸うたばこの煙を鼻から吐くような女性。すごくかっこいい。
そして・・・

f:id:chokobostallions:20220106171826j:plain

ダイアン・ウィーストである。どこかで見た顔だなぁと映画を見てる間ずっともやもやしてたのだが、最後のテロップでギクッとした。『ハンナとその姉妹』『ブロードウェイと銃弾』いずれもウディ・アレンの映画で2度のアカデミー賞を受賞した名優。個人的には『ハンナとその姉妹』だろうか。あのウィーストがまさに怪演にふさわしい暴れっぷりで感動。主人公もしたたかだが、その主人公が狙いを定めて後見人となる老女もまたさらにしたたか。

f:id:chokobostallions:20220106172834j:plain

さらにさらにそのうわまえをはねるようなしたたかなボスを演じるのがピーター・ディンクレイジ。この映画には善人が一人もいない。騙し合いの騙し合いだ。財産を持つ高齢者を騙して金儲けする仕組みは日本にもある。それを大胆に展開するこの物語は笑えるようで笑えない現実を見る側に提示する。いかにもしたたかな映画。
(=^・^=)
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

レイジング・ファイア ベニー・チャン

ベニー・チャン監督の遺作となった『レイジング・ファイア』を鑑賞。驚くべき傑作だった。
 
正義を貫き、出世からも遠ざかり、汚職を徹底的に嫌う清廉潔白な刑事(ドニー・イェン)が主人公の映画なのだが、この映画は間違いなく敵役のニコラス・ツェーを軸とした映画だ。この敵役は、元同僚だったドニー・イェン演じるボン刑事の証言で、刑務所送りとなる元刑事ンゴ。ンゴが警察組織全体を敵にまわし徹底的に攻撃し、悪の限りを尽くす。元刑事という立場を利用して、徹底的な悪役に徹する。

f:id:chokobostallions:20220106163156j:plain

しかしこの悪役には理由がある。彼は国家権力と権力を支持する財界(巨大企業)の罠にはめられたのだ。このあたりの表現は実にうまくて、昨今の香港情勢をにじませる。言論統制や弾圧を強める香港政府に対する意思表示ともとれるこの映画は、単なる刑事もののアクション映画ではない。これは政治を語る映画なのだ。

f:id:chokobostallions:20220106163212j:plain

しかしそんなことを忘れさせるものすごいアクションシーンは、少し前に見た『ただ悪より救いたまえ』にも重なるような迫力だった。爆発シーンだけでなく、対決シーンもとてつもない迫力だ。見応え十分、時間を忘れさせる映画だった。
 
 
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

ドライブ・マイ・カー 濱口竜介

濱口竜介監督の作品をこの年末年始に3本ほど鑑賞した。濱口監督は東大卒で芸大でも学び、英語は喋れるし、いかにも国際派として注目されるべきキャリアを持つ。この『ドライブ・マイ・カー』を含め、濱口監督が関わった作品が世界の国際映画祭で注目され、昨年の東京国際映画祭でも特集が組まれるなど、いま最もホットな存在と言えるかもしれない。


www.youtube.com

あらすじなどは省略するが、濱口監督がなぜこれほど注目されているかを色々な媒体で読んだり聞いたりしてみると、そのひとつが演出方法にあるようだ。この映画の中で示される劇中劇。主人公の演出家(兼俳優)がワークショップを通じて集めた俳優たちに向けて演出する方法は、どうも濱口監督自身と重ねているらしい。抑揚のないセリフなどはまさに濱口流だ。しかしこの抑揚のないセリフは海外でどのように受け止められるのだろうか。俳優がセリフに抑揚をつけないというがんじがらめの状態というと小津安二郎を連想する。小津安二郎の映画に連続する、現実にないような台詞回しなどと濱口作品は似ているような気がする。但し、小津映画のように細かいカットの積み重ねではなく、濱口監督は長回しが多い。これは本人も言っていることだが、日本映画のバジェットでは、小津監督や黒澤明監督の時代のような時間的な制約が異なるので、限られた範囲で効率よく映画を作るための方法論のようだ。

f:id:chokobostallions:20220106162419j:plain

極めて印象的な舞台演出があって、このワークショップには国籍だけでなく、手話でしか表現できない俳優がいる。この折り重なる言語の不確実性は、かつて渋谷で鑑賞した『語りの複数性』にぴったりはまる。映画という総合芸術を日本的に最大限の表現を求めようとするとこうなるのではないか、と思わせる。

f:id:chokobostallions:20220106162827j:plain

この映画が示す混迷こそ、時代を示す。そして時代が混迷を呼び起こす。最後に残るのは孤独だけだ。しかし孤独の中でも理解を示し合う柔らかい信頼関係がこの映画の軸にあるのではなかろうか。
新たな日本映画の”カタチ”を見たような気がする映画だった。
 
 
 
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男

ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男』を2022年最初の劇場映画として鑑賞。
超人ハルクマーク・ラファロが『キャロル』のトッド・ヘインズ監督とともに自ら権利を獲得して作った映画。アン・ハサウェイが妻役として華を添え、主人公の上司役としてティム・ロビンスがいい演技をしている。

f:id:chokobostallions:20220106162128j:plain

企業側の弁護士が企業を相手に訴訟するというドラマだ。このロブ・ビロットという実在の弁護士に光を当てた点が注目に値する。(本人がカメオ出演している)
この映画が伝えようとするのは、社会の矛盾だ。社会構造に問題があるので、この問題は解決できない。テフロンの毒性で地域の牧畜に影響を及ぼすことを立証するために弁護士が立ち上がるのだが、相手のデュポンは全く揺るがない。リアルなシーンとして、やっとのことで地域住民の血液検査を7万人分行ったのに、分析結果が示されるまで7年もかかる。その間、弁護士の収入は激減し、家計にまで影響する。そしてやっと公表された検査結果に対し、企業はひとつひとつ反論するという姿勢を示す。つまり巨大企業はどんなことをしても外敵を徹底して振り払おうと時間稼ぎをする。そして訴える側が力尽きて滅びるまで延々と訴訟を継続する。

f:id:chokobostallions:20220106162145j:plain

こうした企業の在り方を誰もが不快に思うだろうが、この映画はそれだけでは終わらない。地元でデュポンに雇用されている人たちは、こうした訴訟に同調しない。最後は経済が問題を消し去ろうとするのだ。この対決に勝者はいない。いや勝者というならそれは巨大企業の側だけだろう。彼らは勝ち続けることはあっても敗れることがない。そして最悪の場合は『レインメーカー』のように倒産すればいい。賠償額が高すぎて払えなくなれば会社
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

天井の葦 太田愛著

f:id:chokobostallions:20220101062326j:plain

おかしな借金だらけの探偵のところに、匿名の依頼が来る。ある老人が渋谷のスクランブルのど真ん中で空を指さして息絶える。探偵への依頼はこの老人が指さした空が何かを明らかにすること。たったこれだけのドラマがとんでもない展開になってゆく。想像を絶する。そして制御不能
老人が元医師で、施設で暮らしていたことがわかってくる。そしてそこに公安の捜査官が訪れて死んだ老人と会話していることが明らかになってくる。これがあるジャーナリストが始めようとする番組とそれを阻止しようとする国家権力との間で揺れる。
物語は、死んだ老人が瀬戸内海にある島にいるある人物、暗号名「白狐」へ託したメッセージをめぐり混迷してゆく。探偵たちは小さな島にいる「白狐」がいったい誰なのかを探しだす。探偵たちを別件逮捕するべく追いかける公安の凄まじい執念。

f:id:chokobostallions:20220101071655j:plain

話の途中だが、これネットで上下巻を買ったが、下巻が表紙だけで中身が上巻だった。もうびっくり。こんなことあるんだね。すぐにクレームのメールを入れたらすぐに対応していただいたけどね。
話を戻すが、戦前戦後の日本の報道と現代を照らして、国家がいかに報道を悪用するかという話が後半の主軸となってゆく。
国が危うい方向に舵を切るとき、その兆しが最も端的に現れるのが報道
というセリフがあるとおり、この作品は報道が常に国の圧力に屈する傾向を示す。そして報道を巡る国家は公安を使ってまで徹底的に弾圧する。そしてこのドラマが示す最も恐ろしいところは、これらの一連の弾圧が、常に無意識にあるいは潜在的に圧力をかける点にある。
報道は政府に(直接)殺されるのではなく、自ら忖度し権力の意向を察して動くように死んでゆく
という最後のひとことに全てが宿る。
町山智浩さんがあとがきでこの感動的な作品に華を添える。それはこの著書のタイトル「天井の葦」の意味がウィリアム・ブレイクの『無垢の歌』が、当時の過酷な児童労働に対する反発を示すものであることを教えてくれる。葦はこの本の中で孔雀の羽として代用されている。そしてその葦(羽)の先にはペンがある。ペンを持つものは常に国家と戦う義務がある。国家の弾圧に阿ることは、国家権力の濫用を許す愚かな行為だ。
いまネットや報道を見ると、国家が守ろうとするものが何なのかがわからなくなっているような気がする。それが国家の狙いでもある。その国家の狙いにまんまと丸め込まれた人々の潜在意識にある妥協点を破壊するような作品がこれだと思う。そして原一男監督や大島新監督が世に突きつけるものをも連想させるすごみがあった。
ドラマでありながらドラマ以上の哲学と教訓を与える。
常に国家を信用していはいけない。」ということだ。
 
 
 
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!

ただ悪より救いたまえ

 
こりゃすごい、すごすぎる。『ただ悪より救いたまえ
日本を舞台にして始まるこの映画。日本のヤクザを殺しに来た殺し屋が、ヤクザの弟分の殺し屋に追いかけられるという物語。まぁとにかくすごい。細かい物語のディテールなどどうでもいい。とにかくすごい。
 

f:id:chokobostallions:20220101055347j:plain

ファン・ジョンミンはもちろんだが、殺し屋として対決する相手役が、あの『イカゲーム』の主人公、イ・ジョンジェだ。全く『イカゲーム』とは全く違うキャラ。おどおどして借金まみれの行きあたりばったりな主人公だった彼が、今回は壮絶な殺し屋。

f:id:chokobostallions:20220101060020j:plain

日本から韓国、そしてタイを舞台にした格闘のドラマは、まさにフィルム・ノワール。そして最後の二人の対決は、『孤狼の血』にも似た殺し合い。しかし圧倒的にこちらのほうが迫力がある。想像を絶するタイを舞台にした対決シーンに圧倒される。
子供の臓器売買など、現実で起きている恐ろしい社会をこの映画は、憎しみと愛が交錯する壮大な物語となっている。
(=^・^=)
 
 

dalichoko FC2 - にほんブログ村

貼りました。みつけてみてくださいね。

にほんブログ村 グルメブログ 日本全国食べ歩きへ

にほんブログ村 旅行ブログ 歩く旅へ

ブログサークル
ブログにフォーカスしたコミュニティーサービス(SNS)。同じ趣味の仲間とつながろう!